水を蛇行させる抵抗柵(大地の再生@三重県熊野市/2)


みかんの木の根元にはマルチをかけるため、木と木の間の土には雨水が集まり、斜面をまっすぐに流れて窪みができた水路様になっている。土や肥料や有機物なども、一気にU字溝まで流れている様子が伺える。ここにわざと障害物「抵抗柵」をつくり、流速を弱めるとともに、水を分散・停滞させ、浸透を少しでも促したい。

その際、抵抗柵は流れに直角に置くのではなく、やや斜めに傾ける。自然の川は必ず蛇行する。なぜなら空気や水は常に渦をまくように動いているからだ。2本の横棒を杭止めして蛇行をつくる。

その際、横棒をまたぐように左右の杭は交互に置く。そして強く打ちすぎない。ちょうどいい硬さの加減で止めておく。植物の根も地中にガチガチに入っていくことはなく必ず隙間がある。大地に対して締めすぎない、わずかなゆるみがあってよい。

横棒の隙間には草と石をおいて間をふさぎ、杭には番線でしばる。そして杭の出すぎた部分をノコで切る。雨風が通って安定する自然さで作り終える。「雨降って地固まる」・・・最後は降った雨が整地する。

結の作業が続く。

コルゲート管が入る。

セパを打って止める。これも管のセンターに打つのではなく左右に振り分ける。

竹が足りなくなる。片手で使える小型チェーンソーでどんどん切っていく。

竹と竹の枝葉が入って完成。周囲に炭と有機物をまく。

矢野さんはU字溝の穴あけを始めた、常に水が流れている等高線に直角のU字溝である。

U字溝は完全に撤去してしまう場合もあれば、底面だけ砕いてしまう場合もある。今回のように1〜1.5mのピッチでブレーカー分の穴だけ開ける場合もある(常に通水がある場合は水分過多にならないように小さめに)。水を地中に浸透させ、地中の空気を抜くという効果がある。

ふだん流れのないU字溝には炭をばら撒き、竹の枝葉などを置いて、最後に石を置く。

今回の最下段では木と木の間にグランドカバーとして剪定枝と炭を試験的にまいた。剪定枝の放置は「黒点病」が出ると果樹農家は嫌うが、「好気的な環境になれば病気は出ない」と矢野さんは言う。

草の管理も除草剤でなく、むしろ草の力を借りて有機的環境を保つほうがよい。草のプラスの力、可能性を使う。草を生やすことのマイナス面「みかんの栄養を奪う、虫を呼ぶ、風通しが悪くなる」は、草を生かす草刈りで改善できる。

草は風のエネルギーに従順。風のかけているエネルギーのかけ方と方向で、草がおとなしくなり、草が強く生えなくなる。農地が広くなればなるほど、草と仲良くし、草を取り込む・・・自然の機能を農地に取り入れていく。その道を選択したほうがはるかに有利、と。

最後に矢野さんは農道の水切りをしていた。今回作った水脈の一部がU字溝のない道側に回るので末端に大きな天穴が作られているのだが、穴の手前で水脈が停滞しないように一部堤を切ってあった。そこからアクが出ていき、点穴にアクがたまらないそうだ。

最後に感想会。しかし、今回も皆よく動き、よく働いた。結というものは、不思議なパワーを呼ぶものだ。

私が四万十式の作業道の本をお渡したからか、帰り道、農園中央のコンクリートの坂道を矢野さんと歩いていると「道ってさ、すごく大事なんだよ」と、面白いエピソードを教えてくれた。

潜在自然植生の「混植・密植型植樹」で有名なM先生の植樹地で何度やっても木が育たないフィールドがあり、そこには真ん中にこの農道と同じようなまっすぐな道がつけられていて、雨が降るとそこに水が流れるような所だったそうだ。

矢野さんはその道に水を蛇行させる、今回のような抵抗柵をズラリとつけた。最初は車が走りにくい歩きにくい・・・と非難轟々だったそうだが、なんとそれだけで、植樹地の木が一斉に育ち始めたという。これにはさすがにM先生も驚かれたらしい(笑)。

水と空気には粘性がある。道はときにそれを分断し、あらぬ方向へ導いてしまう。現代の土木の道や水路は、強引な切土盛り土をもって直線を取ろうとする。それをの植物の根につなげて考えられる人がどれほどいるだろうか?

今夜はKさんとテント泊の予定だったが、矢野チームが泊まる「熊野青少年自然の家」に空きがあり、おまけに宿泊費がめちゃ安なので、合流してそちらに泊まらせてもらうことにした。まずは近くの温泉「熊野倶楽部 湯浴みぼっこ」へ。

夕食は「花の窟」近くの「花のいわや亭」で。生簀があり、メニューには魚料理が豊富。私は前回来たとき寿司屋で食べたマグロの味を思い出し、マグロ丼セット1,800円。

地元産本マグロ、赤身と中トロが乗っている。やはり、すばらしくおいしいマグロであった。


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