大地の再生講座@奈良(4)/完成の先に見たもの


午後、Kさんが皆から離れ、ひとり下の段でなにやらスコップを動かしている。

溝を掘って水たまりを繋いでいるのだった。そうして排水を促しているのだ。

「それ、屋久島の2日目で矢野さんがやっているの見たよ」と私が言うと、矢野さんが犬の散歩の度に移植ゴテで気になるところを掘っていたら、やがて山が美しく変わっていった・・・というエピソードを話してくれた。

上ではスタッフを中心とした女性たちが集まって、設置を終えたパイプを再び掘り出している。

どうやらレベルが合わず、もう少し掘り下げて設置し直すということらしい。

皆、泥まみれである。これは矢野さんの指示ではない。彼女たちが、自発的に発見し自発的に手直ししているのだ。

配管し直して、竹が置かれる。

そこに枝葉を、元を下流側に向けて挿していく。下流に向かいながら、枝元を土や竹の間に押し込んで重ねていく。流れに対して葉の向きが抵抗をつくる感じになる。泥やゴミをキャッチし、渦や波をつくるということか。

ぬかるみにはチップがまかれ、奥では風の草刈りが始まっていた。

刈り取った草は下の道に落とされグランドカバーとなる。

これが完成型なのか・・・。美しく、なんだか懐かしいような光景だった。

すでに生き物たちの息づかいさえ感じられる水脈のライン。やりすぎない草刈り・枝切り。だが、上のヒノキ林からの風がはっきりと感じられた。

上の段に作られた道には垂直方向にも溝が切られ、水脈が作られていた(パイプは入っていない)。これは矢野さんの指示らしい。

これまで視覚経験のない、初めて見る大地の形である。ふと「アートを見ているようだ」と思った。

矢野さんが屋敷周りのU字溝の底を壊しにかかる。

そこに家裏の崩れた土砂の排水を導こうというのだが、ここにコルゲートパイプを通すにはいくつもの塩ビ配管の下を通さねばならない。岩が出てブレーカーを使う始末だった。

日が落ちて、時間切れとなる。

最後に矢野さんが重機をアクロバチックに動かして下の敷地に無事着地。皆から大きな拍手が湧いて終了。

母屋で感想会。私は、配管を終えて風の草刈りで出現した光景が非常に印象的だった。それは視覚だけではなく、きっと五感で光の粒(つぶ)のようなものまで感じたのだ。それにしても施主(主催者)さんの参加者に対する丁寧な応対と、それに応える矢野さんとスタッフ・参加者たちの熱心さはすばらしかった。

矢野さんに約束の作業道づくりの本を差し上げて、お土産の手作りコンニャクを頂いて、奈良を後にする。京都あたりで一泊したいが、仕事が待っている。大阪の道の駅で車中泊となった。

今回はたくさんの出会いが訪れた。祝杯はコンビニで買った白州を、シェラカップで。


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