家づくりにおいて窓枠の色なんて「どーでもいい」・・・と思うだろうが、これがけっこう重要だったりするのだ。ウチの場合、外壁は金属サイディング(ガルバリウム鋼板)で色がモスグリーンなので、サッシの窓枠を白なんかにしたら別荘風になってしまい、ちょっと若向きすぎて嫌だ。シルバーも目立ちすぎる。だからシャンパングレーという色にした。これは正解だったろう。
ところが最近の窓枠は、内側(部屋側)の色の選択肢もある(白かグレーを選べる)。複合サッシで内側には合成樹脂を貼っているので外側とは別色ができるのだ。
内側は風呂場以外はすべてグレーで統一した。ほとんどが漆喰の白壁という空間なので、内側は白にしたほうがすっきりするか?・・・と迷いもあったが、これはグレーにして正解だったと思う。
やはり白ではメルヘン調になってしまう。グレーで締まりを与えたほうが漆喰のエッジがよりきれいに見える。
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窓枠にはもう一つ重要な選択肢があって、内側の壁の部分に木の枠を4方に回すのと、下だけ木にして上側3方は漆喰を塗り込む(もしくはクロス貼り)方法の2通りが選べる。
上写真の窓は後者だが、こうすると漆喰の光と影が美しい。後でカーテンをつけたいような場所、また台所や仕事場など窓枠に堅牢さが求められるところは、4方に木枠を回した方がよい(ただしプリーツブラインドは窓枠がなくても付けられるし、窓枠がないほうがスッキリきれいに見える)。
もちろんその材質にも選択肢がある。わが家の木枠はすべて無垢のスギ材を使っている。そして節が少ないグレードの「上小節(じょうこぶし)」を用いている。上小節というのはJAS規格で「材長2m未満にあって節が4個(木口の長辺が210mm以上のものは6個)以内」というものだ。なので節はほとんどないといってよく、スギの木目だけが模様を描いている。
構造材の梁やフローリング材のスギは節だらけだが、それとは対照的で、それゆえ目立って美しいものである。
スギ材は心材の赤と辺材の白の色味がはっきり分かれるが、両方が混じる材を「源平」といい(源平合戦の旗色になぞらえて)、効果的に使うと美しい(ただし日当りのいい窓枠ではやがて日焼けして不明瞭になる)。源平は赤を下に使うと落ち着いて見える。
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障子の場合はもちろん四方に木枠がくる。上と下には溝が入り、下側を敷居、上側を鴨居と呼ぶ。乾燥と木目、材質、どちらに木表を使うかといった反りへの配慮も必要になる。
部屋側が低温乾燥「愛工房」の床材(30mm厚)。バルコニーはホームセンター経由のスギ足場板をカットしたもの(35mm厚)をはめ込んである。フローリング材に関してはどちら方向に板を貼るかという選択があり、ここの場合は海への展望、視覚の広がりを求めて窓に伸びる方向にした。
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床と壁の突き付けにつける「巾木(はばき)」もスギだが、ここは柾目を使ってあり、より直線が強調される。
天井と壁との見切りにつける「廻り縁(まわりぶち)」も重要なアクセント。ここも柾目のスギ。
これらは部材どうしの伸縮や振動を吸収する役目も持っており、おかげで角に汚れを溜めず、掃除しても汚れむらが目立たない。結果的にそれが軸線をつくり、空間を美しく見せる。
ただしやりすぎてもうるさくなる。ウチでは階段と一階の天井には見切りをつけていない。いい素材も大事だが、大工のセンスも重要だ(もちろん腕も)。幸い知識と腕を併せ持った棟梁だった。工務店もいい素材屋と建具屋を構えており、十二分に木造の美しさを引き出すことができたと思う。
(私が木にウルサいのでいろいろ配慮してくれたのかもしれないw)
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表情の豊かなスギ材の場合、細かな素材の選択とその使い方次第でちがったものができてしまう。無垢の木で家をつくるとなると単価が上がってくるので、設備や建具の質を落としてつじつまをあわせようとするキライがあるが、窓枠や建具枠は絶対にケチらないほうがよい。それぐらい重要なものだ。
それから産直の家づくりなどでは木材が長持ちするからと真壁(柱が表に出て壁で隠さない)ばかり勧める傾向があるが、そうなると窓の自由度がなくなる。つまり空間がワンパターンになる。大壁にして漆喰塗りにするとモダンで自由な空間を創出でき、そこにこそ窓枠・建具枠の無垢材部が輝いてくる。
骨太な昔の民家風の家をつくろうと思ったらとても庶民には手が出ないが、普通の家のクラス(ただし構造材の高温乾燥とプレカットは飲まなければならないが・・・)で「スギ・ヒノキの家というのはこんなに美しいのか!」と感嘆するくらいの家が出てこなければ、無垢の木を使ってもらえないだろう。
集成材と合板とチップとバイオマスのための林業では情けない。無垢材と木造文化の森を、創造・存続させたい。
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おまけ。キュウリ初収穫。バジルはサンドイッチに。