明け方、仕事中の机からの風景。日の出がだいぶ南側に寄ってきた。シルエットは小豆島あたりになる。
先日、久しぶりに工務店の社長来訪。窓枠などの納まりに苦労したこの家の制作秘話(?)を拝聴したのだった。
私も聞きたいことがいろいろあった。とくに材料の選択のことである。
この家の回り縁や幅木などはスギの柾目を使っているのだが、それらは市販品はなくてすべて特注なんだそうだ。確かにここに張り物がきたらずっこけてしまうし、無垢でも木目のない洋物調では合わなかっただろう。わずかの幅なのだが、スギの風合いと木目が効いているのである。
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シナベニアの天井と漆喰壁の見切りに付けられた細い見切り材が回り縁である。ここがくっきり目立ちすぎてもいけないが、さりとてそのまま突きつけではみっともない。うまくいったおかげでピクチャーウィンドウも美しく映えている。
窓周りを窓枠を台だけで省略し、3方を塗り込めてしまうやり方は、昔は非難されていたものだ。クロスの継ぎ目が結露によってはがれることがよくあったらしい。が、いまは複合サッシ・ペアガラスになり、外側はアルミでも中は樹脂製になって結露とは無縁になった。
漆喰の白壁にした場合、この3方の枠のない部分の光のグラデーションが美しい。このとき下の窓台が壁から若干出ていることが重要である。この出幅を「ちり」というのだが、これも壁材と下地の厚みから逆算し、どの程度出すか決めて窓台を作り込んでいくんだそうだ。
四隅を窓枠で切られてしまうとまったく別の雰囲気になってしまい、繊細さはなくなるが、そのぶん堅牢になる。窓枠で囲った場合は、縦と横の木の突きつけをツラ合わせせずに。縦を少し厚めにして段差をつける。こうすると影ができてすっきりと見える。
回り縁や幅木は影をつくる。影は建物がどんなに古びても強い軸線を表現してくれる。
影で見せるのが建築の基本であり、それには設計家の見識だけでなく大工や左官など職人の確かな腕が要る。
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「神は細部にやどる」とミース・ファン・デル・ローエに言われるまでもなく、昔の職人たちは経験的にそれを行ってきたわけだが、その時代の素材によって微妙な付け替えが必要になってくる。
ただの写しではダメなんだよね、考えなくちゃ。そこが建築の面白いところである。