ニホンミツバチ


前日、韓国の酒マッコリを大量に差し入れしてくれたH君と囲炉裏で飲み、朝はタケノコご飯を炊いて朝食。その後、H君の案内で中里のハチ名人の家を訪ねに行く。H君は某テレビ局のディレクターで、番組で名人を取材した経験を持ち、アトリエにはたびたびその名人のハチミツをお土産に持ってきてくれていたのだ。

ニホンミツバチ、この神秘の昆虫をご存知であろうか。彼らは自然状態では樹洞などの穴ぼこに巣をつくる。その習性を利用して、木をくり抜いた人工巣箱を設置して、ミツバチを呼び込み、その蜜を採るということが、山村では連綿と行なわれてきた。外敵のスズメバチに対して西洋ミツバチは皆殺しにされてしまうが、ニホンミツバチは団子状にススメバチを包んでしまい、熱殺することで有名である。

蜂蜜はそのハチたちが集める花の種類で味わいがちがう。平地では外来種のセイタカアワダチソウやブタクサなどにハチが寄ってしまうため、いい味の蜜がとれないという。西洋ミツバチは大きな花たとえばニセアカシアなどを蜜源にするが、ニホンミツバチは小さな野草から蜜を集める。その味は香り高く典雅な甘みは絶品である。天然酵母から作った囲炉裏パンとの相性は抜群である。

新たに生まれる女王蜂から姉蜂が巣別れ(「分蜂」という)するときが、人工巣に入れるチャンスで、そのとき名人は、女王蜂を中心に働き蜂が団子状態になっている蜂の塊を、素手で人工巣箱に入れるという。その様子はH君から聴いていて、春になったら名人の居場所に案内してもらう約束だった。2人の名人を回って蜂の周辺の話しを聴き、巣箱やその作り方などを教えてもらった。が、どうやら分蜂を見るのは、もう時期的には遅いらしい。「そっちのH集落なら(ニホンミツバチが)いるさ、いい巣をかければ入るよ。だけどもうちょっと遅いな」と名人は言うのだった。

巣箱は板で作った角よりは自然木を利用した円筒形がよく、材はキリかクリがいい。野外に置くので腐りにくいからだ。ミネバリもいいが、重いのが難。それをチェーンソーでくり抜いて専用のノミで内側を滑らかにし、さらにバーナーで焦がして黒くすると、ハチが安心するそうだ。名人にちょうどいいクリの倒木を手配してもらえることになった。それで巣箱を自作し、来年春の分蜂を狙って、アトリエで蜂蜜を採取する夢が生まれた。楽しみである。

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