四国の古民家には中二階という構造が見られる。最初、2階の窓がやけに小さいので不思議に思っていたのだが、2階は物置であって、屋根と一階天井の空間を大きくとることで夏の暑さをしのぐ工夫なのだ。その下にまた軒を出す。この構造だと家も乾きやすく、長持ちするだろう。徳島には茅葺きが多くみられるが、現在はほとんどトタンをかぶせてしまっている。Tさんも以前はこのタイプの家で、囲炉裏を使っていたそうだ。
また農家の納屋に煙り抜きの小型屋根がみられるものがあって、なかなか可愛らしい形なのだが(舌写真)、これはタバコ葉の乾燥のために中で火を焚いていたのだそうだ。
丸亀で「うちわ」のミュージアムを見、うどんを食べる。一見ドライブイン風の高級そうな建物なのだけど、中は常連が昼間から酒を飲んでおり、ショーケースや常時取れるおでんがあって、完全に「讃岐化」しているのが面白い。
道後温泉の「神の湯」では脱衣所にお茶のサービスがあり、陶板の上に七輪の火がおきてヤカンが湯気を立てている。その隣で汗を拭いていると、初老のおじさんが話しかけてくる。
「このお茶を一杯のんで湯につかって、汗を出して、そのあとでまたこのお茶をのむ。これで10年長生きできるそうじゃ」
そう言って、おじさんは新たな湯のみに注いだお茶を、僕に手渡してくれた。道後温泉の湯はやや熱いから汗が出る。お茶が染み渡るのである。
ヤカンのかかる七輪の上に格子戸があき、外のネオンが見える。そこから豆腐売りのラッパの音が流れてくるのだった。