ちょっと所用で東京方面へ行ってきた。ついでに見たいものもあった。六本木の防衛庁跡地にできた「東京ミッドタウン」という施設である。いわずと知れたガラス建築だが、跡地にあった樹木を保護して植栽、また内部にアート空間をちりばめる、というのもウリらしい。
が、吹き抜けに竹なんかが植栽されているんだけど、よく見ると竹は穴に刺さっているだけ。葉っぱの部分は造花、幹は本物だが背割りが入れてありそこを透明のビニールテープでふさいである。直島の地中美術館でも見たトクサがまたも抽象彫刻的パーツで使われていたりする。
カフェやレストランの値段はもちろんバカ高。デザインサイトという建物では有名建築家のプラン模型などが展示されていたが入館料が1,000円なので見るのをやめた。喉がカラカラになったので地上階のスタバで300円ちょいでアイスコーヒーを飲むとこれが不味い。
「これって、アトリエで飲んでる2番煎じのコーヒーの味みたい」
「ホントだ!」
いま、全国の地方都市ではドーナツ化現象がおき、郊外に大型店舗ができる一方、町の中心部がシャッター通りになっている。危惧されるのは、このドーナッツ穴を再開発して、ミニ版「地方ミッドタウン」ができることである(すでに出来上がっているところもある)。こうして郊外も、中央も、ダメにされる。そこには生命力のある緑も水もない。施設を運営するためのランニングコストは途方もない額になろう。
このようなプランに汲みしているプランナーや建築家やアーティストに問うてみたい。
「あなたたちは何を食べ、どこで寝ているのか?」
本来の生命力旺盛な日本の自然が育んだ食物。その源(みなもと)を破壊し、空輸された世界の美食を高額な値段で食わせる。そこで働く者に真の喜びがあろうか?
僕らはふたたびアトリエに戻り、山や敷地が生み出してくれる水を飲み、山菜の出を待つ。スギタニルリシジミの羽の輝きに見入る。お金は要らない。