日本三大祭りの一つ、岐阜県高山市の「高山祭り」。祭りは春と秋の2回あるのだが、20万人の人出があるといい、にわかに行こうとすると市内の宿は満杯でとれない。
13日の昼頃アトリエを出て、ぶどう峠から長野入りし、清里回りで諏訪へ抜ける。ああ温泉バンザイ! 下諏訪温泉外湯で入浴。値段は220円。
安房トンネルを抜け高山に入ったのは夕刻。が、雨が降り出し雷まで鳴り始める。市内で食事をして一つ先の駅の駐車場でコペン泊。
明け方、雨は小降りとなる。空の雲は動いており、カーラジオの天気予報は「午後から回復」。だが小雨がちらほら。ちょっとでも雨が降っていたら屋台は出ないと聞いていた。
屋台は屋台蔵に待機しており、出番を待つ兄ちゃんが渋面で空を仰いでいる。とにかく屋台の前面は見れる。うん、確かに凄い。これが12台、すべてが違う趣向をこらした12台が、町に繰り出すのである。
前日から高山の町を観察して不思議だったのは、町が彩りなく静かだったこと。普通はお祭りといえば、アーケードにはきらびやかな飾り付けが下がっていたりして賑やかなものだが、それがぜんぜんない。「ひょっとしてお祭りの日にちを間違ったかも?」などと心配してしまうほどであった。
天気の回復とともに、そんな不安も消し飛ぶほどの人が出はじめた。12台の屋台のうち、カラクリ人形を搭載した3台が、広場で絡繰りを披露する頃には、人々がごった返し、身動きがとれない。
高山の屋台は、太鼓の叩き合いをするとか、勇壮な引き動きを競ったりということはしない。ただただ、道に引き出し、その作品を鑑賞させてくれるのである。
木彫一つとっても、本来なら美術館のガラスケースに保護されるべき作品が、作者の息づかいを感じられるような、至近距離で見れる。
未来樹2001の高山イベントのとき、高山祭りの屋台の写真を見せられ、感動のあまり夢中でスケッチブックに模写した谷口与鹿と、10年ぶりの邂逅を果たしたのだった。