エンダイブ(ニガチシャ)とフリンジーグリーン(ガーデンレタス)、が大きくなってきたのでサラダで毎日のように食べている。エゴマも育ってきた。ニンジンの間引き菜も(ツマヨウジくらいのニンジンの形ができている。かわいい)。
キャベツの千切りも少し。それに市販のレタスやタマネギ(悔しいが、これらの野菜はいまのアトリエ畑ではうまく育たない)を入れる。豆もやしにした白いんげんの食べ残しも載せる。
ところでサラダといえば、水洗いした野菜に市販のドレッシングやマヨネーズをかけて食べる人がほとんどだろうけども、実は決定的に美味いサラダの食べ方(調理法)があるのだ。それは「トスド・サラダ(tossed salad)」という方法である。
まず野菜を冷たい水で洗う。まちがってぬるま湯などで洗うと、野菜の「酵素」がはたらいて栄養素がこわされる(この酵素の話しは別項で話そう)。そして徹底的に水を切る。ざるでチャッチャなんて程度ではダメで、回転式の水切り機を使うか、布巾に野菜を入れて振り回す。遠心力で水を切るのだ。
その野菜をボウルにとり、少量の油をかけてトスする。よくサラダボールとセットになっている木製の大きなスプーンとフォークがあるでしょう。それで野菜をつかみ、持ち上げてサラダボールに何度も落とす。少量の油でも、このトスを何度も繰り返すと野菜全体に油の薄い被膜ができ、表面がキラキラしてくる。
「トス(toss)とはつまり、野菜を空中に持ち上げて落とすわけで、それを何度もくり返していると野菜の表面に油の膜がつくられる。それで空気が遮断されて栄養素の破壊が防がれ、味が守られる。油の膜ができていないと食べている間にも味が落ちていくくらいに、サラダはデリケートな料理なのである」(『丸元淑生のクックブック』文藝春秋,1987)
徹底的に野菜の水をきるのは、野菜から水溶性の栄養素が溶け出さないようにするためもあるが、トスのとき、乾いていたほうが油が粘着しやすいからだ。この油の膜が野菜を酵素から遮断して、ビタミンの破壊を防ぐ。同時に水気も弾いて、栄養素が溶け出すのを防ぐ。
こうしてから、初めてドレッシングをかける。このドレッシングに油は入れる必要はなく、基本は酢に少量の塩を溶かしたものでよい。酢は米酢でも、レモンなど柑橘の絞り汁でもOK。好みでスパイスやハーブを入れ、ワサビや醤油や、すりゴマや味噌なんてのもいい。さらに甘夏(あまなつ)の実なんかを散らしても美味い!
「最初から酢や調味料に油を加えたドレッシングをつくって、それでトスすると、油の膜がよくできないために水分や塩によって野菜がしおれてへなへなになり、パリパリした新鮮な野菜の歯ざわりがなくなるわけである。それでは感動的なサラダの味にはなりえない」(同書)
僕らはまず市販のドレッシングやマヨネーズというものを買う。そこからサラダというものに向かっていく。野菜の処置は中途半端・・・。結局、ドレッシングやマヨネーズというものを、野菜をダシに味わっているだけ。けれども、サラダの本質は、本当は違うのだ。
丸元淑生氏はこのトスド・サラダを、アメリカの栄養学者、故アデル・デービス『Let’s cook it right』から学んだと、同書に記している。実は、サラダは欧米でも新しい食べ物で、冷蔵庫が普及し生で食べられるレタスが普及してブレイクしたのだ。
サラダの利点はいうまでもなく加熱による栄養素の破壊がないこと。いまの季節、僕らはトスド・サラダをモリモリ食べる。二人でレストランで出るこぢんまりしたサラダの5人前は食べるだろう。サラダは元気に身体を動かしている人じゃないと沢山は食べられないという。生野菜を消化するには身体に力が要るんだそうだ。
「といってもサラダは、つくりかたによっては誰が食べてもおいしくないというものになりがちである。みんなにおいしいといって食べてもらえるサラダをつくることが大事で、それにはいくつかの原則をふまえていなくてはならない」(同書)
ダマされたと思って一度このやり方でまずはレタス・サラダを食べてごらんなさいな。本当に、ビックリするくらい美味しいから。アトリエの畑では動物糞由来の堆肥はいっさい使わないので、生食も安心♪ っていうか、サラダが食べたいがゆえにこうしたこともあるんだけどね。
間伐材のスギからつくったトスド・サラダ用のスプーン&フォーク。野菜を扱うにはスギの柔らかさは最適だネ。そのうちボールもつくるぜぃ。