ジャガイモの味


東京・横浜出張から戻ったその朝、早々イタルさんの来訪に起こされる。タマネギをいただいた。

「モロヘイヤの苗いっぱいあるんだけどさ、いるかい?」

「ああっ、ありがとうございます、いただきます!」

畑を始めた最初の年に同じようにイタルさんから貰ったモロヘイヤは、よくできた。さっと茹でて包丁で叩くと粘りが出て面白い青菜だった。僕らは花のあと種を収穫し、翌年まいたのだが、その種はなぜかまったく発芽しなかったのだ。今年はモロヘイヤのスープをつくってみたいと思い、イタルさんに苗のことを遠回しにお願いしておいたのだ。

新しく植える場所をつくるのに、ラッキョウの残りを抜いて整理する。市販品とまでは行かないが、けっこう粒の大きなものができていた。ついでにジャガイモも試しの初収穫。こちらもやや小振りだけどよくできている。今年は花が咲かないうちに茎が枯れ始めるものがでている。

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ポテトサラダをつくる。皮ごと茹でて、竹串が通ったら取り出して熱いうちに皮を剥き、すぐにスライスして蒸気を抜く。ヘラでマッシュしながら油と酢を少々。スライスした生タマネギ、塩を振って出た水をしぼったキュウリのスライスを混ぜる。ジャガイモの味が深いので塩やマヨネーズはいらない。

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このポテトサラダは白ワインがよく合うのだが、今日はカモミールティー。赤城のIさんにいただいたカモミール2株は次々と花をたっぷり咲かせ、花の乾燥茶もたくさん作れたが、生花わずかこれだけの花で、美しい黄金色が滲出する。もちろんカモミール特有のすばらしい香りである。

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ところで、丸元レシピのポテトサラダでは「ジャガイモの皮に近い外側の層は栄養素の宝庫で、このポテトサラダが美味しいのは、調理の過程でその栄養が失われていないからである」「ポテトサラダはこんなに美味しいものだったのかと驚かれるにちがいない」と書かれている。

同様にニンジンの皮や青菜の不用なところにも豊富な栄養があるので、それで野菜のストックをとることを薦めている。これはある意味正しいけれど、「よい野菜」でない場合は農薬禍の危険も含んでいると思う。

アトリエの畑の野菜は無農薬無肥料とはいえ、まだ3年目。この辺の山村では麦などには金肥を使っていただろうし、コンニャク栽培では連作障害回避のために劇物の農薬を使う。それが完全に抜け切るまではまだ年月がかかるだろう。料理にはそれを念頭に入れる必要がある。

魚の内蔵なども、栄養の宝庫にちがいないが、近海の底魚や内蔵も一緒に食べるアサリなどは汚染も心配されるムズカしい時代である。変な苦みを感じたら止めるべきだろう。


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