たくあん漬ける


ダイコンはまだ畑でうまくできないし、夏から秋にかけて取材やらで忙しく、植え忘れたこともあって、甘楽で地粉を買ったとき一緒に「干し大根」を購入していたのだ。これでたくあんを漬ける。たくあんには向かない青首なのでなんと17本で1,000円だった。アトリエでさらに1週間ほど天日に干し、いよいよ仕込み。

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▼材料
干しダイコン17本 約8kg
自然塩 350g
米ヌカ1kg
ナスの葉、赤トウガラシ、柿の皮(いずれも乾燥品)
ウコンの擂りおろし(色づけ用)

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今年とれたウコンがあるので、色つけに少し擂りおろして入れてみる。

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ナスの乾燥葉は買ってきた米ぬかに添付してあった。

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塩を入れて、ダイコン以外の材料を全部混ぜる。

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塩のダマがあるのでよくつぶしたりする。この樽はヌカ撹拌用。

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別の樽にヌカを敷き、その上にダイコンを一段、すき間なく詰める。このとき、よおく干し上げていないと、ダイコンがポキと折れてしまう。曲がらないとすき間が大きくなる。すると重しが均等に効かずうまくない。また、ダイコンに水分が多いままだと、凍結したりして、いいたくあんにならないようだ(過去に失敗経験アリ)。干すと甘みが強まるので、ザラメなんかいりません。

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一段目を積んだらヌカをかけ、2段目を積み・・・を繰り返す。

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3段目が積み上がったところ。17本だったので、ちょうど3段でまとまった。

最後のヌカを全部入れて手で均す。

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中蓋を入れて重しをする。かなり重くていい。

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ビニールをかけてヒモで巻いてできあがり。冷暗所に保存する。来年こそはアトリエの畑のダイコンでつくりたいものだ。

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ところで、たくあん漬けをいま町でやるときは、この保存場所に困るのだ。いまの家は全体暖房で、寒い場所がないので、漬け物がうまく漬からない。かといって、家の外の北側の軒先なんかでは、おそらく寒過ぎてダメ。また日中は温度が上がるであろうし、湿度も不安定だ。漬け物の置き場所は、乳酸菌が発酵するほど良い一定の寒さと、一定の湿度が必要なのだ。

その点、古民家の土間は最高であろう。囲炉裏の煙りで空気中の雑菌は少ないだろうし、無垢材と土の壁なので調湿効果は抜群だ。これまで白菜漬け、梅干し、ドブロク、と塩蔵、発酵食品をつくってみたが、いずれも良くできた。電気冷蔵庫形のワインセラーが漬け物に向く、と丸元淑生氏などは書いているが、どうなんだろう? まず気になるのは、電気代と電磁波。そしていくら大型のものでも、さすがにタクアンの樽は入れられまい。

ところで発酵食品は、日本人が菜食をしようとするとき、とても重要な食品なのだ。穀類、豆類、野菜を基本食のトリオとすると、どうしてもビタミンB12が欠乏する。ビタミンB12は乳製品、肉、タマゴ、魚などに多いが、植物には含まれていないのだ。

が、面白いことに、発酵食品下では微生物がビタミンB12をつくっているので、味噌、納豆、醤油、漬け物などからこの成分を補うことができる。必須だけれど、多量にとる必要はない成分だから、発酵食品をとっていれば満足できるのだ。

日本ほど漬け物のバリエーションが豊かな国もないであろう。しかし、いま市販の漬け物はほとんどがニセモノになり、発酵どころか保存料と着色料と砂糖、化学調味料漬けの滅菌食(殺菌食?)になってしまっている。

本物の発酵食品は、菌が生きているので、店頭販売で一定の味を保つことができない。だから、小さな商店の自家製かそれに近いものでしか流通販売できない。コンビニや、全世界からモノをかき集めて売る大型店舗や、外食産業では、もともと釣り合わない食品なのだ。

ここで地球規模の視点から、日本という国の自給自足を取り戻すことを考えてみる。まず穀物菜食を基本にするのが大前提だ。すると、発酵食を取り戻すことが大事になってくる。漬け物などの本物の発酵食品が常にあること。つまり自家製にするなら、無垢の木と土間と土壁の家の構造や、囲炉裏・カマドを使うライフスタイルが大切になってくる。

もしくは、ごく狭い範囲の流通経路で売るマーケット(昔の露天市場みたいなもの?)がほしい。自然農などでつくられた本物の野菜や穀類・豆、果物などは、天然の酵母が元気なので、発酵食品がよくできる。というわけで、農薬や化学肥料を使わない農業生産が、非常に重要になってくるのだ。

水も大事である。町の水道は塩素が入っているが、天然酵母に元気がない農薬野菜を、その塩素入り水で洗ったとき、自家製とはいえ美味い漬け物ができるだろうか? ちなみに、戦前まで日本では、塩素は全く使わない「緩速ろ過方式」の浄水場が全国に一万カ所以上あり、それと井戸水で、飲料水から生活の水ほとんどすべてが賄なわれていたのである。

塩素を使う急速ろ過処理は戦後、進駐軍の監視下で強制され、そのまま企業が結託してずるずると現在に至っているのだ(僕は以前、設計コンサルタントで浄水場の設計に関わったことがあり、そこで機械を売り込む企業の凄まじい攻勢と目玉が飛び出るようなその値段に驚いたものだ)。水の結晶写真で有名な江本勝氏の本をみると、塩素入りの水道水ではまったく美しい結晶ができないのが示唆的である。

これらに気づくとき、心情的な肉食否定、畜産否定だけではない、本当に感動できて満足できる理想的な穀物菜食(せっかく日本にいるんだからお魚はちょこっと)が見えてくる。

アトリエに来て自然農で畑の作物を食べて、天日干し、山の水、薪の火に囲まれて、発酵食をつくったりしていると、あまりの美味さに驚くことが多い。町の暮らしでこれまで20年近く自然食を標榜し、行きつ戻りつ試行錯誤を繰り返してきた僕だが、そこで突き当たったいくつもの壁は、このアトリエにきていともあっさりと突き破ることができた。


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