屋久島紀行19.(吉野ヶ里遺跡)


昨夜の泊まりは鹿児島のTホテル。駐車場料金は900円と高い。夜、天文館通りという繁華街方面に出て「和田屋」という老舗の鹿児島ラーメンの店へ。鹿児島を初めて訪れたのは20年近く前のことだが、桜島の粉のような火山灰が町に降っていた。この街がいっぺんで好きになった。そのときは「のぼるや」で食べた。和田屋のラーメンは洗練されたる味わいだった。スープは豚骨でも獣臭さはないのである。鹿児島ではお通しに大根の漬け物が出る。

さて朝の出発時、駐車場のおじさんが群馬ナンバーなのを発見して話しかけてきた。「鹿児島の街は人が多く夜も活気があるね」と印象を述べると「とんでもない!」とおじさん。実は半年前、巨大マーケット「E」が市郊外にオープンし、街の客が激減したという。市内の飲み屋が1000軒もつぶれた(3000軒が2000軒になった)というのだ! 駐車場のお客も夜だけは変わらないが、昼間はガラガラになってしまった、と。

買い物客ならずなぜ夜の飲み屋まで影響を受けるのか? Eのおかげで車中心の生活が加速されてしまい、市の中心商店街への足が遠のくからであろうか? 僕らはここ3年ほど、カーナビ付きの軽自動車で高速道路を使わずに日本中を走って町や郊外を観察している。すると、このEグループが、日本の隅々まで浸透していることに驚嘆するのである。四国では、琴平さんの近くに建設中のEにも出会った。その施設も数千台の駐車スペースを有する、まるで飛行場のような建設風景であった。

Eは立地の土地そのものを破壊するだけでなく、近隣の商店街をも破壊し、この土地固有の文化や人間関係をも破壊するのである。その野立て看板には「私たちは木を植えています」とある。その植林とはいったいどんなものなのか? 環境論者は自分の目で確かめ、ぜひ声を上げてほしいものだ。この事実に批判が出ないのはなぜだ? ずっと考えているのだが、ハタと気づいた。「報道統制」である。

こうして潰された市内中心部は高層マンションが建てられ、荒涼とした都市公園に置き換えられる。ガラスとコンクリートと人工的緑の世界である。そしてその未来に、薬だらけの食品を否応無く食わされる、一部の資本家以外は家畜におとしめられた、地球上の動物たちがみな悲鳴をあげる、そんな社会が見える。

高速に乗り、一気に久留米まで行く。屋久島で出会った久留米のコペン乗りMさんから仕入れたラーメン情報で「丸星ラーメン」という店へ。鹿児島「のぼるや」を彷彿させる割烹着のおばちゃん群が中をすべて仕切っている。なかなか衝撃的な光景なのだ。しかも「皆様の交通安全を祈ります」とでっかい看板が店内にもある。自動販売機の発券方式。讃岐のうどんやにあるようなセルフ給仕方式のおでんがあるのだった。

柳屋や光華園によく似た独特の臭いだった。味はいい。これが350円というお値段。おでんは80円。ごはんが100円。替え玉が100円。全部頼んでも630円と、和田屋のラーメンより安い。で、上すべてを完食(笑)。

***

佐賀の「吉野ヶ里遺跡」を見に行った。もしこの天気が屋久島で起きたなら、遭難してたも? という雨と寒風に阻まれながら、今年2月に公開されたばかりの「北墳丘墓」まで歩く。

人骨が入っていた甕棺が、発掘状態のまま、屋根をかけて公開されている。ここはとくに身分の高い王の墳墓ということらしい。YKは装飾品のガラス管玉や衣装の色に既視感を観じたようだった。明日が春分の日というのも意味深だ。ともあれ僕らはその気持ちを確認して、逃げるように吉野ヶ里を出た。

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下道を通って関門トンネルを抜け、山口に入る。どこかいい温泉に入って車中泊としよう、と選んだのは俵山温泉。外湯の「町湯」は夜11:30までやっていてなんとか間にあった。PH9.5という西日本1のアルカリ泉、いわゆる美人の湯である。

湯質はすばらしいが、その新しい施設がまるで病院の風呂のようでくつろげなかった。なぜ木造にしなかったのだろうか。


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