草刈りABC


とにかく山暮らしの夏は草刈りに追われる。敷地をくまなくやるのは大変なので適当に手抜きはするけれど、どうしてもやらねばならないところがあるわけで、まずは「家周り」は必須。そして「生活の通路になるところ」。こういうところは下駄で歩きたいのでね。

middle_1220135624

次いで外せないのは「水路の周囲」。水まわりは草も生えやすいが、草刈りを怠れば水路が詰まる。下流に迷惑もかかる。

middle_1220135656

あとは「石を見せる」ことを簡単な目標に、ツルに覆われたところを刈っていく。ツルを切断して絨毯を丸めるように剥いでいく。敷地の石垣や大石がツルに覆われていると見苦しいし、石は、風水・波動のグリッドとしても大事な存在なので、隠したくないのだな。

middle_1220135809

ところでアトリエではいまだにエンジンの草刈り機は使っていない。あの騒音と振動がたまらなく嫌なのだ。音楽をやっているせいかな。刈った後の戦場のような感じも寂しくて好きじゃない。長いカマも数種類あるけれど、一番好きなのが昔ながらの短い手ガマ。

研ぐのはこのように流し台の角を使う。左手で持ち手を固定し、砥石は右手の人差し指で押さえる感じで、砥石の半分の長さを使って研ぐと安全だ。すると、砥石はプロペラのような形に反ってくる。

middle_1220136045

砥石も何種類か使う。その日の調子で刃物へのノリがちがうから。まず荒砥で裏面にバリが出るまで研ぎ、中砥石に変えてバリをとって本研ぎをする。最後は仕上げ砥石でさらに研ぎ上げることもある。仕上げ砥石は割れたものをスギの板に埋め込んで使っている。砥石と刃物の関係はとても微妙で、繊細なものだ。

middle_1220136379

Y先生にもらった手打ちのカマに自分で柄をつけたものだが、もう研いで研いで、銘のところまで細まってしまった。

middle_1220136557

手ガマで刈るときは利き手の右で持つわけだが、左手で草根元を結わくように持ち押さえる所作も重要で、この押さえ方で、刈りやすさが際立ってくる。左手の指全体で刈る草の群れを「わしっ」と掴んで、垂直に引っ張り上げる、そこをザクッと刈る。右手は手首を回転させるだけで、肘や肩は動かさない。それは1秒の間に2回というくらいの速い振幅だ。それを可能にするのは、鋭く刃を研ぐことはもちろんのこと、できれば朝方の、植物にしっとり水分があるときが刈りやすい。

エンジンの草刈り機との大きなちがいは、手ガマの場合はじっくり観察しながら刈れることである。エンジンの草刈り機の場合は目から刈る先が1.5mくらいあるが、手ガマの場合は50cmしかない。で、刈っている場所の地面の様子を観察することができる。

地面にミミズがのたくっていたり、クモがいたり甲虫が歩いていたりする。アトリエの畑ではサワガニにも出会う。「すまんな、うまくやれよ」と挨拶しながら刈っていく。

なにも徹底して刈る必要はないわけで、残したい植物があったら刈らないでおけばよい。そうして敷地は、徐々に生き物のパワーを温存しながら重層的な植物相を作り上げていく。除草剤や殺虫剤はまったく使わないのだ。

これは新しい庭づくりだよね。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください