苫小牧演習林、モエレ沼公園(4日目、ジンギスカン)


翌朝、苫小牧へ向かい、北大の苫小牧演習林森林と人間に行ってみる。昨年、この演習林の育ての親である石城謙吉氏が『森林と人間~ある都市近郊林の物語~』(岩波新書)という本を出された。私はこの本が今後の日本の森林を考える上でとても重要なものになると思い、当ブログで長々と解説した(こちら)。実際にその場所に立ってみたかった。

入り口はなかなか分かりづらい場所にあったが、なんとか探し出し、早朝に到着。

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市民が自由に入れるようになっている。カモの集う池があり、林内を小川が流れている。イワナらしき魚影を確認した。釣りは禁止されているが、山菜採りの人は入っているようだ。

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ハルニレ。北海道低地の代表的な広葉樹が一通り見れる。ミズナラも多い。

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エゾリスを見た。野鳥が多い。そして人を恐れない。ちなみに手を出してみたら手に止まった! 合成写真ではありませんぞ。ヤマガラに乗られて緊張のyuiさん。私の手にも何度も飛んで来て乗ってくれた。職員の人が餌付けしているのかもしれない。

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カモ類も悠々と泳ぐ。もちろんヒグマも出没する。

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私たちは一番乗りに近いようだったが、後からたくさんの人たちが散歩に訪れていた。予想以上にすばらしい場所で、たくさんの市民に愛されているのが感じられた。

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支笏湖を通って札幌へ戻る。快晴ですばらしい紅葉が見れた。苫小牧から湖までのルート276周辺一帯は1954年の洞爺丸台風で原生林の大木が根こそぎ倒れた場所だ。wikによれば、

森林が受けた風害はすさまじく、支笏湖周辺などでは全山の大木が根こそぎ倒された。かつてはほぼ全土が原生林に覆われていた北海道だが、明治以来の開拓と木材生産、そしてこの台風により、かつての威容は失われたと言われるほどである。

という。

いま、静かに森は快復しつつある。

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湖畔の我らがアクティ号。フルタイム4WD、660ccの偉い奴。

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札幌に戻ってすすき野でラーメンを食べ、東区にあるモエレ沼公園へ。ここも行ってみたいと思っていた場所。イサム・ノグチが公園設計し、彼の死後2004年にグランドオープンしている。入園は無料。

中心施設のガラスのピラミッド。ここにはノグチのギャラリーもある。

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イサム・ノグチはすでに1930年代に、大地を刻むという発想のランド・アートを考えており、彫刻と遊具が合体したような作品を試作していた。それらが札幌で結実したわけだ。

インカの遺跡を思わせる石段の丘。

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墳墓のような作品。三角の金属部分はステンレス管に表面を回転ヤスリ仕上げ。

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遊具たち。ん~。ちょっと冷たいな。あんまり遊びたくない感じ。そしてここには野鳥の数が極端に少ないように思った。カラマツなどが植えられているのだが、生き物への配慮はない。

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そもそも、この公園はゴミ埋め立て地だったのだ。実はこの下には1979年からのゴミ、総量にして270万トンが埋められているのである。鳥たちもそれを知っているのだろう。大地からの波動がよくない(低い)のだ。

天気がいいのでピラミッドの中はかなり暑かった。それも気持ち悪い暑さ・・・。なにより新建材だらけなので臭い・・・。トイレはもちろん水洗でウォシュレット付き。私はそこで、真新しい新建材の臭いの中で、お尻をウォシュしていたのだが

「人間はいったい何をやっているんだろうか?」

「本当にこれでいいのだろうか?」

と思い始めていた。東京都の日の出町では最終処分場の埋め立て跡地の上に運動公園が造られ、そこで市民運動会が行なわれているが、それと変わらないではないか? そういえば東京でもアンドウタダオが同じようなことを計画していたな。ゴミの上に植林。ゴミを埋めた場所(土に還っているわけではなく、永久ゴミだ)にアートや木をかぶせれば許されてしまうのか? そんなものが文化なのか?

彼らアーティストにとって、木や植物は自分の作品を引き立たせるパーツでしかない。私はかつて、アンドウの直島の「地中美術館」でパティオに植えられているトクサを見て、つくづくそう思った。トクサは旧アトリエの石垣の周囲にも自生しているが、昔は砥石代わりに刃物の錆をとったり、また歯磨きにも使われていた有用植物である。

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イサム・ノグチのあかりシリーズ。彼らは自然素材をクールに使うことは巧い。が、環境との有機的つながりまでは、視野を持たない。その冷たさが、ノグチの遊具に現れている。ひょっとしたら、ブラックスライドマントラの美しさは、ノグチを支えた庵治町の石工の和泉さんや、地元の石磨きのおばちゃんたちの手も加わっていたからなのではないか? そう思ったりもした。

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夕刻、旧北海道庁などを見学。夜はお言葉に甘えて、またU宅へ。すでに準備万端! 今日はジンギスカンを御馳走してくれるという。羊の肉である。

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北海道では花見でジンギスカンを食べるのだそうな。私も学生時代に2度、北海道を旅しているが、そのとき地元の釣り人にジンギスカンを食べさせてもらったことがある。車の中にガスコンロと焼き肉鍋が入っているのである。その気軽さに驚いたものであった。

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ニシンの煮付けも美味しかった。

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湯でたジャガイモにバター融ける、の図。

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そして酔いもたけなわの頃、ようやくUのブルースギター炸裂(私は轟沈していたらしい)。最近Uは札幌のカフェでライブもやっているらしい。

「あの~。Uさんて、普通のサラリーマンなんだよね」

「うん」

「もったいないよ、あの才能! だって料理に歌にギターに造形に・・・書、でしょ!」

「ま、N大工学部って変わったやつ多いから・・・」

翌朝、痛い頭をかかえつつyuiさんに問いただされる私。Uは大学時代からの友人なのであった。


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