カーンの言葉、足利、館林


前夜、けっこう飲んだのだけど、ホテルのベッドで4時に目が覚めて『ルイス・カーンとはだれか』を読み続け、相方が目を覚ました頃にはついに読了してしまう。

「構造は光を与え、光が空間をつくる」

「街路はひとつのルーム(部屋・空間)である。合意された共同体のルームである。街路の性格は、交差点ごとに変わっていき、それはいくつものルームのつながりとみなしていいでしょう」(カーン1971年の講演から)

「都市とは、その通りを歩いているひとりの少年が、彼がいつの日かなりたいと思うものを感じ取れる場所でなくてはならない」(1973年)。

カーンの珠玉の言葉が、明け方の僕の脳幹に心地よく突き刺さる。

“カーンの言葉、足利、館林” の続きを読む


大谷、再び足利へ


天気が良く暖かい。また栃木方面にお出かけ。前々から興味を持っていた大谷石の採掘跡を見にいく。大谷石は栃木県の宇都宮の近くにある大谷という町にある岩脈で、その石は軽く加工しやすく色も爽やかなクリーム色で、素材感がとても優しい。火災にも強い。水戸で生まれ育った僕は、この石には馴染みが深い。蔵の建築に使われていたり、大谷石の町の塀はそこかしこでみられたものである。

「大谷資料館」ではその石や採掘道具などををみられるだけでなく、採掘跡の地下壕に入れるのだった。すでに資料館に近づくにつて大谷石の岸壁がそこかしこにそそり立ち、露天掘りで採掘した跡もみられる。地下道からその採掘跡に入る。寒い。中の空間は驚くほど広い。だけど、かつて日原鍾乳洞で受けたような感銘はなかった。ここでアートの展示やイベントが行なわれているそうだが、僕は見たいとは思わない。ただし、大谷石が魅力的な建築素材であることには変わりない。

大正時代、フランク・ロイド・ライトが「帝国ホテル」の建築設計にこの大谷石を採用したことは有名だ。装飾過剰なライトの作風に、この大谷石の気品のあるナチュラルさは、多いに貢献したことだろう。ライトはこの大谷石に惚れ込み、設計・施行の過程でわくわくしながら完成を見守ったことだろう。

middle_1137421586

“大谷、再び足利へ” の続きを読む


足利、名草へ


栃木県の足利までドライブ。「足利学校」と「名草の巨石群」をみてきた。思っていたよりも感動が薄い。途中、ガチンコ・ラーメン道で知られた佐野ミノルからのれん分けしたという伊勢崎の「支那そばや」群馬店に行ってみた。店内はすでにトリガラ系のふくよかな匂いが充満している。出てきたラーメンはたしかに魔味のある個性的なもの。麺は博多麺のようなストレート。だけど塩っぱい。上州人の好みに合わせたのか? また行きたい店ではないかもな。

asikaga1

nakusa


連載終了


前日から『現代農業』連載の本描きにかかる。しかしまあ毎回毎回、なんと手の込んだイラストだ(笑)。編集部でOKのでた下書きラフをじわじわ本描き用に細部まで仕上げ(この時点で下描きの紙は消しゴム跡でボロボロ)、それをライトボックスで水彩紙に鉛筆でトレース。水彩紙に直接下書きしないのは、厳密な線や手書き文字を含むイラストなので、描いては消しという繰り返し作業を水彩紙に落としたくないからだ。

下書きを正確にトレースされた線を練りゴムで淡く消し、ペンの線で仕上げていく。下書きの線が正確だからといって、その上をペンでなぞれば絵ができ上がるかというと決してそうじゃないのが絵の恐ろしいところなのだ。下書きの淡い線をたよりにしながらも、ここはゼロからモノを描く気持ちでいく。鉛筆の線に甘えると失敗する。水彩ペンの0.05ミリ、0.1ミリの2本を使い分け、微妙なタッチで線に強弱をつけることを忘れない。

連載イラストの中には丸や楕円のシャープな線が求められることがままある。手描きで正確に描くのは難しいのでここは楕円定規や雲定規を使う。定規を使ってシャープな線をみせることで、人物などのジャギーな線がひきたってくる。全体としてメリハリが出、豊かな印象になってくる。これが線のマジックだ。が、この定規の使い方がまた、非常に職人的で難しいのだ。

この楕円定規も2~3枚持っていればいいかというと、とんでもないのだ。僕が持っているのは、東京神田にある「タニー商会」というところで買った楕円定規セットで、楕円角15度から5度ごとに60度まで(35度だけは5枚)、楕円幅4mmから80mmまで、1mmごとに(10mmまでは0.5mmごと)各4枚と、合計で41枚もある。

middle_1136981969

“連載終了” の続きを読む


笠間と結城


前日、水戸への途中、笠間に立ち寄って「茨城県陶芸美術館」で板谷波山(いたや・はざん1879~1953)の作品を見たのを書き忘れた。植物のモチーフの彫り模様を施した気品ある白磁や彩磁の花瓶がすばらしく圧倒された。

朝、水戸の編集者Sさんといつものファミレスで打ち合わせ。年度内におさめる筑波山周辺のイラストマップを引き受けることになりあわただしい。再来週は取材にまた水戸から県南に行くことになりそうだ。

Sさんとのイラストマップの仕事も長い。僕らは一般のお手軽なイラストマップの手法とちがい、現地踏査や入念な構成を経て何倍もの手間をかけ、これまで様々な絵地図を送り出してきた。この茨城の自然と風土のすばらしを、高らかに歌い上げるべく手法をこらしてきたつもりだ。が、いかんせん様々な障害があり、納得のいく仕事になったと言えないものも多い。また、著作権買い取りなので、作品を再版できなかったり、ネームが入らないので内容を剽窃されたりもして、何度か悔しい思いをしてきた。ところが、さすがに努力が評価されてきたのかSさんにタイムリーな連載の話が来ているという。将来は出版物になれば、それが最も実りある完成だ。楽しみである。

その後、弘道館を見、旧県庁の観光コーナーで資料を入手して結城へ。結城つむぎをぜひ見たいという相方のたっての希望だった。結城つむぎは絹糸の紡ぎ方から糸の染色、原始的ないざり織りという手法から、すべてが機械化ができない手のかかる織物である。しかし、結城にはまだまだ織り手がいて、資料館などを個人が開いていたりする。ギャラリーものぞいてきた。古い建物がまだ現役で機能している風景がよかった。