前日から『現代農業』連載の本描きにかかる。しかしまあ毎回毎回、なんと手の込んだイラストだ(笑)。編集部でOKのでた下書きラフをじわじわ本描き用に細部まで仕上げ(この時点で下描きの紙は消しゴム跡でボロボロ)、それをライトボックスで水彩紙に鉛筆でトレース。水彩紙に直接下書きしないのは、厳密な線や手書き文字を含むイラストなので、描いては消しという繰り返し作業を水彩紙に落としたくないからだ。
下書きを正確にトレースされた線を練りゴムで淡く消し、ペンの線で仕上げていく。下書きの線が正確だからといって、その上をペンでなぞれば絵ができ上がるかというと決してそうじゃないのが絵の恐ろしいところなのだ。下書きの淡い線をたよりにしながらも、ここはゼロからモノを描く気持ちでいく。鉛筆の線に甘えると失敗する。水彩ペンの0.05ミリ、0.1ミリの2本を使い分け、微妙なタッチで線に強弱をつけることを忘れない。
連載イラストの中には丸や楕円のシャープな線が求められることがままある。手描きで正確に描くのは難しいのでここは楕円定規や雲定規を使う。定規を使ってシャープな線をみせることで、人物などのジャギーな線がひきたってくる。全体としてメリハリが出、豊かな印象になってくる。これが線のマジックだ。が、この定規の使い方がまた、非常に職人的で難しいのだ。
この楕円定規も2~3枚持っていればいいかというと、とんでもないのだ。僕が持っているのは、東京神田にある「タニー商会」というところで買った楕円定規セットで、楕円角15度から5度ごとに60度まで(35度だけは5枚)、楕円幅4mmから80mmまで、1mmごとに(10mmまでは0.5mmごと)各4枚と、合計で41枚もある。
たかが楕円ごときに、と思うかもしれないが、様々な図案イラストパターンに対処するにはこの数は必須なのである。きょうびグラフィックソフトで楕円など簡単に描けてしまうのだけど、僕のPCにはそのソフトも入っているのだけど、手描きのイラストにはPCの線は合わない。たとえば楕円定規で線を描きながら、僕は線に強弱を与え太さを変えたりもしている。こんな有機的な線はPCで出すことは難しいのだ。
さて、こうして線が入ったら今度は彩色である。線画がすばらしくても、彩色に失敗すると絵は台無しになってしまう。線の中を埋める塗り絵のような塗りの始まりだが、最後は線と色が一体となって一つの絵として輝き出すように、じわじわと迫っていく。
ふう、完成だ。でも終わりじゃない。この原画をスキャナーに取り込み、フォトショップで読み込んで角度の修正、印刷データ用にCMYKモードに変え、色補正、ゴミの消し、縮尺修正などを経て、CDに焼き込む(一緒に使う写真データも)。こうして、ようやく仕事として完成なのだった。
下の町のヤマト便の最終受付は19時。Copenで林道を飛ばして(最近シカが出るので飛び出しに注意しながら)15分前に無事到着。毎回締め切りぎりぎりになる僕の仕事ぶりに、相方は毎回ヒヤヒヤものらしい。相方は僕がウンウンもだえながら仕事仕上げ中、便所の汲み取り作業をひとりでやってくれた。
まあ最終回も無事終わったことだし、打ち上げってことで美味しいものを食べに行こう!
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