さて今夜の泊まりは別府である。湯布院には一泊4万円などという高級旅館も存在するが、別府はバックパッカー御用達の素泊まり1,500円なんていう宿もあって共同浴場は無料~200円で入れる。
で、以前テレビで「地獄蒸し料理」というのを見て、こいつを一度やってみたかったので地獄釜付きの宿、鉄輪(かんなわ)温泉「大黒屋へ」。宿の周囲から湯気モクモクですごいことになっているのだ。
これが蒸しカマド「地獄釜」である。石とコンクリートで組んであって、ザルが乗るくぼみがあって中央の穴から蒸気が吹き出している。
これが2基あって温度がちがうらしい。使い方と蒸し時間の表示。
宿にチェックインしてさっそく内風呂に入る。源泉掛け流しの熱い湯でさすがに濃い。湯上がりのほてりも引かぬうちに食材を買いにいく。ガイドのイラストマップがあってそこに食材が買える店がポイントしてある。
散歩をするとそこかしこに湯気だらけだ。別府八湯といい世界一の源泉数を誇る別府だが、中でもここ鉄輪は最も温泉場らしく別府を象徴する景観といわれる。
排水がコンクリートの壁に絵を描いている。
いくつかの野菜と「魚介セット(地獄蒸し用)」と骨付き鶏肉を購入。宿から歩いていける距離に肉屋と八百屋と魚屋が程よい距離で点在し、ちょうど「湯けむり散歩」ができるようになっている。
バ宿のおかみさんにやり方を教えてもらう。基本的にザルに入れれて蒸すだけ。調味料は食べるときに付ける。ただ、食材によって蒸し時間がちがうので、ザルをいくつかに振り分けておくのである。
バルブを閉じて蒸気を止めてからザルを釜に載せる。
あとは木の蓋をして麻袋をかけ、蒸気のバルブを全開に。時間のかかる肉類や魚介は高温の釜のほうへ。
かぼちゃなどは10分で。肉・魚介は20分。
できた! 魚介とトウモロコシ。
骨付き鶏と里芋。
岩塩をかけて食べる。ふっくらしてジューシー。ほんのり温泉の複雑な香りが交じる。
鶏は皮のゼラチン質のところがプルプル状ですこぶる美味い。魚介は廉価(1パック2人前1000円)な冷凍品だが、それでもなかなかのものだ。とくにワタリガニ、これを宿自家製の青唐辛子味噌につけて食べると最高だ。
財布が許すなら生魚介(たとえばを活けモノのカニなど)を買って、蒸しすぎない加熱で引き上げたら最高の味を引き出すことができるだろう。私たちは室内で食べたが、野外テーブルもある。
調味料や2階にある台所もタダで使わせてくれる。翌朝は温泉たまごとアサリの味噌汁が出た(御飯は自分たちで米を持ち込み、電気釜を借りて炊くというスタイル)。これで(地獄釜使用量込み)一泊一人3,000だった。ただし、ゴミの片付けや洗い物の自分たちでやる。
別府のお湯は効く上に、蒸気を吸い、料理による飲泉効果もあったのかさらに身体がじんわり火照りが続いた。身体の外と中から同じ薬効と振動数を受けるわけで、湯治効果は抜群なのかもしれない。ふと腑に落ちた。薪火に当たり、その火で調理する囲炉裏暮らしは身体がやけに温まるが、原理は同じなのではあるまいか。
というわけで、外湯を回れなかったのがちょっと残念。