連載原稿やら企画書やら仕事が片付いたので、天気を待って、女木島(めぎしま)へ渡る。高松から最も近い島、だが「いつでも行けるから」と思っていたら高松移住から1年が過ぎて、今回が初めての旅である。
往復の船賃は720円。自転車を持って行った。普通の自転車だと+640円かかるが、折りたたみ自転車は無料。「めおん2号」というかわいい船が2時間に1本、高松港~女木港~男木港へ発着している。
女木島は「鬼が島」ともいわれ桃太郎伝説があり、島の頂上付近に鬼が(実際は海賊)住んでいたという洞窟が観光の目玉になっている。男木島は南端に花崗岩で作られた灯台が映画の舞台にもなった。というわけで、両島のシンボルである鬼と灯台のマンガが船の横腹に描かれている。
高松市内の幼稚園の団体と一緒で船上はに賑やかだった。
港に鬼の彫刻が出迎えてくれる。
船の到着に合わせて洞窟までのバスが出ているのでそれに乗り込む。折りたたみ自転車も車内へ。集落の平地はわずかしかなく、すぐ山の中に入っていく。
洞窟は入場料500円。案内のおじさんが詳しい解説をしてくれる。
思ったより大きな洞窟で、ここに人が隠れ住んでいたことをも思わせるに十分。ところどころ、鬼の人形が置かれてライトアップされている。
雨水が溜まる池がある。
これはノミで彫った跡。
「鬼ヶ島観光協会」のHP(コチラ)から拝借した地図。あきらかに掘り進んで作った感じがわかる。
掘りやすいというそれなりの地質上の理由がある。天井は硬い玄武岩、その下の掘りやすい凝灰岩の部分が洞窟になっている。落盤を防ぐのに所々、柱を残して掘っている。
外に出ると、山の上部に玄武岩の柱状節理が見える(市の天然記念物)
江戸川乱歩の傑作『孤島の鬼』に出てくる洞窟みたいで、私はワクワクしながらこの洞窟を楽しみにしていた。そんなイメージを膨らませるなら、鬼の人形はいらない(でも、子供たちは喜ぶだろうけど・・・)。
洞窟のすぐ上が頂上の展望台。360度のパノラマが開けるのは瀬戸内海でもここくらいなもの(案内のおじさん談)という。
バス停に戻ってここからは自転車でダウンヒルを楽しみつつ西浦漁港の方へ。ハゼノキがたくさん実をつけている。昨年秋の実が鳥たちに食われぬまま多量にぶら下がったまま。
実には脂肪がたっぷりあり和蝋燭の原料とした(愛媛県内子町の伝統産業は特に有名)。飢救作物にもなったらしい。
センダンが多い。まだ花が付いている木もある。
集落に近づくとミカン畑が。瀬戸内といえば段々畑にミカン栽培というイメージがあるが、ミカンが換金作物として盛んに作られ始めたのは昭和30年代以降で、それまではサツマイモと南京豆、そして裏作に麦という自給の主食を栽培していたのである。
ジョチュウギクを見つけた。かつては蚊取り線香の原料として盛んに栽培された。
森林はパワフルで、チョウをはじめ昆虫が多いのに驚いた。洞窟前の駐車場にテングチョウがわさわさ飛んでいる。女木島は面積2.67 km²、標高200mの山があり平地はわずかしかなく人口は200人をきる。過疎化が森林を原生的な方向に導いていると言えるが、その健全さは、本土の山とは違う感じがする。
本土では排気ガス、新建材から出る有毒ガス、工場や焼却場から出るガス、農薬、除草剤、マツ枯れ空中撒布、などによって、山林は常に痛めつけられている。そんなことを島の虫たちが教えてくれた。アゲハ類がたくさん目の前を横切る。ハチも多い。
テングチョウ。
ヒオドシチョウ。
ルリタテハ。
北に向かい、県営キャンプ場まで行ってみる。この辺りの海は奇麗だ。
女木港に戻り、周辺の家や石垣を見に行く。
港周辺では冬に「オトシ」と呼ばれる局地的な強風が吹き、それから家を守るために防風の石垣を築く。これを地元では「オーテ」と呼んでいる。
左が安山岩の黒石、右が花崗岩の乳白色。対比が面白い。
これはミックスしたもの。天端に乾燥に強いマツバボタンが花を咲かせる。
野石と割り石を組み合わせた乱積み。積み手の気持ちが伝わってくる。
女木島から見る屋島。島名の由来に「那須与一が射落とした扇の一部が流れ着いたことから「メギ」という名がついた(このあたりでは「壊れる」ことを「めげる」と言う)」(wik)。
さあ、高松へ戻ろう(帰りの船も幼稚園児と一緒だった)。
明日は男木島1泊旅へ。