カメムシ大発生、その原因は人工林なのに・・・


この秋は西日本を中心にある種のカメムシが大発生した。

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私も今回の旅で和歌山のカメムシを撮影してきた。高速道路のサービスエリアのトイレの誘蛾灯の死骸である。

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カメムシは臭い。群馬の山暮らしで経験があるが、家の中のあらゆる場所のすき間を見つけて入り込み、冬越しする。たたんでおいた布団のすき間や雑誌や新聞の束、陽当たりの良い場所で積まれた薪の間にもごっそり入り込む。それが春先に出てくる。

群馬の山でじいさんばあさんたちに訊いたとき、不思議だったのは「昔はこんなにたくさんいなかった」と言ったことだ。ある昆虫の大発生は自然のバランスが崩れたときの反作用であることが多い。で、後藤伸さんの講演録『明日なき森』という本に出会ってその理由が氷解した。

「ツヤアオカメムシとチャバネアオカメムシの幼虫はスギやヒノキの球果の汁を吸って大きくなります。よく調べてみたら、何と一つの球果で五~六匹が親になれるんです」「スギやヒノキが毎年たくさんの球果をつけるのは、大半の植林地のスギやヒノキが枯れかかっているからです」(『明日なき森』84ページ)

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私が群馬で山暮らしを始めたのが2004年の秋、『明日なき森』の出版が2008年の9月、そして私が『明日なき森』を読んだのが2009年の8月である。

このような重要な情報が農業雑誌などには出てこなかったのだろうか? 調べてみると農文協の『現代農業』1997年4月号に「今年はどうなる? 防ぐ手はあるのか? くりかえすカメムシの異常大発生!」という後藤伸さん執筆の記事がある。その「見出し」は以下のようなものである。

今年は少ないが、2~3年後がまたこわい/主力、補欠が入れ替わり立ち替わり、襲来/激減は激増の予約/なぜ増えた?どうしてこんなに多い?/さて、防除の方法は/昨年の「事件」/移動直前に大集結、そこを叩く/山にもっと照葉樹を/和歌山県南部で成功した「カメムシ捕殺大作戦」

「なぜ増えた?どうしてこんなに多い?」「山にもっと照葉樹を」という項目があることから、記事においてきちんと理由も書かれたのであろう。ところがそれ以後、スギ・ヒノキ人工林とカメムシ大発生との関係は、マスコミにおいて大きく取り上げられることがなかったのである。

カメムシは農産物(モモ、ナシ、ミカン、ウメ等)に大被害をもたらす。なので農薬の大量散布がなされるのだが、その根本原因を直さなければ永遠にイタチごっこが続く。いや、カメムシは次々と農薬に耐性を持ってしまう(しまった)だろう。

「カメムシが大発生するのは、戦後の拡大造林に原因があり、適切に植林されていた昔は大発生はなかった」(同90ページ)

果樹の害虫であるツヤアオカメムシやチャバネアオカメムシの大発生は、戦後の拡大造林が原因だった。植えられたものの。手入れ(間伐)を放棄されたスギ・ヒノキ林はぎゅうぎゅう詰めになって生きた枝を失い、瀕死の状態なので、その幹の細さに比して球果をたくさんつける。そこでカメムシ大発生の温床をつくる、というわけである(写真は和歌山県田辺市、滝尻のヒノキ林崩壊地2013.5)。

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ここからは私のブラックジョークだがw、次のような因果関係を見いだすことができるんですナ。

1)林野行政→拡大造林のやりすぎとその後の間伐政策の失敗を隠したい。

2)農政→カメムシ大発生で仕事が増える。農薬をたくさん使いたい。

3)土木行政→人工林が崩れたほうがコンクリート土木工事が増える。

強度間伐で山を変えていけば山林の健康状態も回復するしカメムシも減るしコンクリート土木工事を減らすことができるのだが、悪いことに1)2)3)の三つどもえ利権がリンクし合っている。これが税金と補助金で動いている。まあお役人は結果がどうなろうと自分たちの給料に変わりはないので痛くもかゆくもないのだが、事業にぶらさがる民間は必死なわけで、このラインから下りれない。

こうして今日も日本の自然はボロい山・農薬汚染・コンクリートだらけになっていくのでありますw。嗚呼・・・。


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