木材の人工乾燥と自然乾燥について


構造材というのは日本の住宅建築において非常に重要である。これの良し悪しで家の耐久性・耐用年数はまったくちがってくるといっても過言ではない。

天然乾燥材であること、太い材であること、緻密な材であること(年輪幅が広すぎてはダメ)が要求される。じゃあ、ツーバイ建築とか集成材はダメなの? と言われるかもしれないが、ツーバイ建築は日本の気候風土に合わない。合板の壁で構造を持たせる時点ですでにアウトだ。

合板や集成材は接着剤の耐用年数が未知であり、日本の湿気と寒暖の差が激しい気候風土では、木口(こぐち、木材の切り口、横断面)から入った水分が、接着剤のおかげで材の表面全体から抜けにくい。だから木口に近い金具の部分やビス打ちの部分が劣化しやすく、強度が落ちる。この工法では50年100年と家が保つことはありえないだろう(※文末にWikiの記述を記す)。

2003年から建築基準法で義務化された新築住宅の24時間換気システムの設置は、シックハウス対策を重視したものだが、その通風によって合板や集成材の劣化は多少軽減されるかもしれない。しかし無垢材ほどの耐用年数は得られまい。そして家を取り壊し、廃棄したとき、それらは燃やせない(燃やしても有害物質が出る)という問題が残る。

私はこれまで口うるさく人工乾燥材と自然乾燥材のちがい、自然乾燥材の良さをブログでも著作でも語り、「愛工房」の低温乾燥を紹介したりしてきたわけだが、YouTubeで建築のプロがまったく同じことを語っているのを見つけたので、文字起こしとともにここに紹介しておこう。

>Vol.16 木の選び方-人口乾燥と自然乾燥

「人工乾燥というものは、窯の中に木を入れて、蒸気で温度を上げるわけです。60度の乾燥…これは低温乾燥。もう80度、90度まで上げて高温の温度をかけるわけですね。そうすると、木の中の水分、それから脂っ気、要は木を変形(反りや曲がり)させるのは脂っ気が悪いんですね、それが悪さをする。温度を上げることによってそれが外に出るようになる、強制的に出して、木から脂っ気を抜いてしまうのです。含水率も低いので当然硬くなる。木は伐り出したときにいったん強度が落ちて、乾燥していくにしたがって強度が増していくわけです。それを人工的にやってしまう」
「自然乾燥というのは自然に水分が抜けるのを待つだけです。木の脂っ気というものは木の中に入ったままです。ですから同じ木でもKD材(Kiln Dry Wood/人工乾燥材)と自然乾燥材をそれぞれ鉋で削り比べてみるとよくわかりますが、人工乾燥材はカサカサしています。自然乾燥材はしっとりとした木の艶が出てくる、これが木の本来の姿なのです」

「この脂っ気がなくなるということは、それだけ木の耐久年数が絶対に落ちてくる。ですから人工乾燥はできるだけ使わないほうがいい。同じ人工乾燥を使うなら、低温の人工乾燥材を使ったほうがいいのです。しかし木のためを思えば温度は低いほうがよいのですが、それでは長時間かかりますから、ビジネスでいうと回転が悪いということですね。だから、高温で乾燥して1週間もかからない間に製品に出してしまう。これはビジネスで出すというということで、木のことなんか関係ないというわけです」

難波さんのところでは専属の大工を通して自然乾燥木材を仕入れ、倉庫で管理し、それを順繰りに使っている。だから年間の棟数は限られてくる。逆に言うと、大手メーカーのように棟数が多くビジネスの回転が要求されるところでは、当然ながら人工乾燥材が使われている。

「人工乾燥材と自然乾燥材で家を建てたとき、そのちがいはすぐには出てこないが、30年~50年サイクルで考えたとき、きちっと出てきます。それは、たとえば30代で家を建てた人がちょうどリタイアする頃に改装しますね、その改装のときに見たらびっくりです。ぜんぜんちがう。リフォームするとき使われていた材料をみると、だからこういう材料を使わねばと、現場に出ている私たちがより実感する」

「お客様は一生にいっぺんか二へんかというところですので、あまり見る機会はないですけれど、私たちは日常茶飯事、そういう仕事をしておる、その中で新築物件もあれば、築30年、築50年、築100年というという物件も直す機会も当然あるわけで、同時進行で新築物件の当事者のお客様にはいつでもお連れしてお見せできますよ。見ればすぐわかります。なるほど、こういう材料を使わなければいかん、ということがすぐわかります」

恐ろしいのは人工乾燥材を扱う木材業界が、ユーザーのことをまったく考えていないことである。九州~関西を拠点として木材関連の事業に関わる渡邊豪巳氏のレポート

「国産木材の乾燥技術確立に関して「喫緊の課題である」との認識が、業界内不在の危惧」

を読んでみると、背筋が寒くなる。この国の木造建築に向かう方向性は、業者の顔色をうかがいながら、いきあたりばったりという感じなのである。

もちろん、かなり前からこのような問題を危惧して天然乾燥にこだわり、真壁軸組の家づくりを推進してきた徳島の和田善行さんのような方もいるのだが(私は群馬の山暮らし時代の前、東京で森林ボランティアと地場産の家造り運動に関わっていた1990年代後半頃に氏の講演を聞いたことがある)、これだけ環境保全が叫ばれる時代にあって、このようなまっとうな家造りがいまだに主流になっていない日本につくづく絶望するのである。

成れの果てが原発事故とその事後処理のデタラメさ、というわけなのだが・・・。

※「合板の寿命については、少なくとも20-30年程度は問題ないとされている。しかし、規格が定まってからの使用実績の期間が長くないため、何十年までなら十分な強度を保てるか、実績を根拠とした超長期の保証はなされていない。乾燥した環境であれば、終戦直後に建設された、耐水性の低いユリア系接着剤を用いた合板による木造建造物であっても、健全な状態で残っているのに対し、高湿度の環境では耐水性の高い材料を用いたものでも早く劣化する」(Wiki「構造用合板」)。


「木材の人工乾燥と自然乾燥について」への1件のフィードバック

  1. 囲炉裏の役目は、暖房、炊事の煮炊き。
    上棟時の骨組の状態時、ゴザやムシロなどを煙が漏れないように二重張りにして、外周を包みます。
    煙が発生するクドウ窯で、蚊取り線香の薬草でいぶします。
    ほぞ穴、土台死下が煙で黒くなるまで燻します。約半年で
    以上参考にしてください

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