車遍路の我らは県道31~県道20~国道438~県道43で行く。渓谷の石は青石である。
途中、「杖杉庵(じょうしんあん)」に立ち寄る。四国遍路の伝説の人物、衛門三郎が亡くなった場所とされる。
その物語のクライマックスをあらわす大師と衛門三郎の銅像が建っている。
長者だった裕福な衛門三郎はみすぼらしい僧侶を邪見に扱ったことがあった。身にふりかかる災いに、実はそれが若き日の空海だったことを知る。そして許しを請うべく四国遍路に出るが、死ぬまぎわにようやく大師に巡り会い、そして一寸五分の石を手に渡され、息途絶える。後年、領主の家に生まれた赤子がその石を握って生まれてきた。その子が成長し荒れ寺を再興する。それが松山「石手寺」の縁起・伝説である。
くねくねと細い道を行く。ゴールデンウィークとて、山道に慣れないドライバーも入り込んで来る。すれ違うのに気を使う。途中、プリウスが立ち往生し三角版を立てていた。
駐車場は広々としていた。そこからよく整備された道をトラバースしていく。奉納された石仏が並ぶ。そうして石段の先に山門が現れる。満開のシャクナゲが出迎えてくれる。
山門。
大師像。
スギが太い。本堂が見えてくる。
時刻は15時過ぎ、歩き遍路はすでに次のポイントへ移動してしまったのか。それっぽい人は見当たらない。山上のお寺にしては広々と、乾いた感じのする場所だった。鐘を撞く。すばらしくいい響きがする。しばし合掌し、その余韻にひたる。
本堂。
大師堂。
青石の塔が建っている。
階段も石垣もすべて青石。片理があって平行に割れやすいので、加工しやすい、積みやすい石なのである。
境内ではボタンが迎えてくれる。
作庭を趣味とする作家の丸山健二が、花の美しさの頂点は開花のわずか数時間である、というようなことを書いていたが、まさにその一瞬に出会えた幸運を思う。
この寺に奥の院がある。スギ帯の上部の樹林はかなり原生的。中を歩いてみたい。
帰路、見覚えのある軽自動車とすれ違う。あっ、岡山のオバチャン2人組だ! ひょっとして、1番から通しでここまで・・・(驚!)。プリウスはちょうどJAFが引き上げている最中だった。帰りは県道43で下りる。
それぞれが、どんな思いを背負って? 1200年の遍路は続く。