「大内正伸の里山再生講座」@綾川(6回シリーズ・第4講)/背負い子作り


綾川で行われている里山再生講座/6回シリーズの第4講は「背負子作り」である。いま山には枯れ枝が散乱しているが、それを取り出せばいい燃料になるし、風も通るので森の再生にもなる。が、枝を取り出して運ぶには何か道具がほしい。道があれば軽トラで運べるけれども、そんな場所ばかりではない。

日本には昔「背負い子」という木製のリュックサック・バックパックがあって、二宮金次郎の像でも知られる通り、山村の子供たちはこの背負い子で薪を拾うのが日課であった。

この背負い子作りのプランがシリーズの計画で出たときは少々無謀かとも思ったが、ほぞ組みをインパクトドライバーでのビス打ちに変えればなんとかなるのでは?・・・と計画に入れてしまった。それから今日まで(どうやったら皆が作れるような簡単さで、安くしかも強度があるものができるか?)ということをずっと考えていた。

写真↓は僕が以前つくった背負子である(詳細図と作り方は拙著『国産材でつくるインパクトドライバー木工』参照)。フレームはスギ材で、ほぞ組みで作り、肩ひもも自作した。

ブログ記事▶︎背負い子を作る||>

フレームはアトリエを作ったときの残材をカンナがけして細くし、タテ材は25×35㎜、ヨコ材は下2本は35×25㎜上1本は35×20㎜と軽量化をはかっている。これを規格品で作れないだろうか? 。ホームセンターでいろいろ材を物色してみると、

1)杉KD材・野縁(のぶち/主に天井を張るための下地材)38×38(=タテ材)2)杉KD材・胴縁(どうぶち/主に壁材を張るための下地材) 38×19(=ヨコ材)

というのがあった。プレーナー(電動カンナがげ)仕上げなのでそのまま使えそうだった。KD材とはKiln Dry Wood=高温乾燥材のことで、自然乾燥材に比べ強度は落ちるのだが反りや割れは回避できる。荷にするのは軽い枯れ枝なので問題ないと判断した。

肩ひもは麻ロープ(4㎜・30円/m)を70㎝を4本の束にしてそこにボロ布で肩当て部を編んでいく。この部分は「連尺(れんじゃく)」といい、江戸時代はこの職人の住む町名ができたほどよく作られれていたのだが、現在ではネットで調べても僕のブログ以外に作り方が出てこない。これは草鞋(わらじ)などと同じ手法だと思うので自己流でやってみたら案外簡単にできてしまったのである。

肩ひも自作、背負い子完成!

肩ひも(連尺)を作る

問題はヨコ材とタテ材の組み方だが、ほぞ組みはあきらめて、タテ材のほうに切り欠きをつくって角のままのヨコ材をはめ込んでステンレスのビスで打ち込むことにした。1カ所に2本のビスを使うので合計4本×3=12本必要になる。

背負い子のタテ材は平行に置くのではなく、「ころび(傾き)」が必要だ。このスミ付けは難しいので原寸大の型紙をつくって参加者にはそこから自分の材に転写してもらうことにした。型紙はA4サイズの厚紙を3枚をつなげると収まった。

寸法は拙著『国産材でつくるインパクトドライバー木工』のものよりやや大きめにした。

他に必要なのは、

3)肩ひも用麻ロープ 直径4ミリ 70㎝ ×4本 ×2組=5.6m
4)肩ひも用綿ロープ 直径9ミリ(三ツ打)1.0m ×2組=2.0m
5)荷しばり用綿ロープ 直径6ミリ(金剛打)5.0m
6)背当て用シュロ縄 直径3ミリ 25m
7)古布(綿100%もしくはナイロン混紡、伸びないもの、イメージとしては日本手ぬぐいのような感じのものやインド綿のカバー生地を各自用意してもらう)1〜2m角くらい。
8)ビス ステンレス製4〜5ミリ長さのもの 12本
9)針金 直径1ミリ(銅線もしくは真鍮、なければ普通の針金でも)1〜2mくらい。

以上である。材料の一部はスタッフのFさんにネットで購入してもらい、主要な木材やロープ、金具類は僕がホームセンターで調達。材料費を割り出してみると、ワンセット1,500円程度に収まりそうだった。

今回は座学はなしでさっそく製作作業開始。型紙から転写してタテ材に墨付けする。1本転写したらもう片方はその材から左右対称に転写すると間違いがない。

木部の製作順序は「採材(ノコで寸法にカット)」→「墨付け(刻む部分に鉛筆やケビキで印をつける」→「刻み(ノコとノミで切り欠き凹部を作る)」→「組み立て(ビスで組んでいく)」となる。

ケビキは鉛筆のかわりに刃物でけがき線をつける道具で、複数の素材の切り欠きの深さを同一にしたい場合に便利だし、最後に凹みをノミで正確に仕上げる際にけがき線がいい基準になる。

ノコは引いたことがあってもノミを使うのは初めての方が多数。

寸法通りに、水平・垂直と直角を正確につくっていくにが大切となる。

電ノコやインパクトドライバーなど電動工具は非常に便利なものだが、部材を正確に接続するためには手道具による刻みが大切で、やはり刃物の基本を学ばねばならない。

ビスによる組み立てができたら布を使って肩ひも(連尺)を編んでいく。

この時点ですでに16時過ぎ、さすがに1日では最終仕上げまではムリだった。

が、参加者のひとりKさんが両肩の連尺を編み上げ、背負うまにで仕上げることができた。

あとは背当てのシュロ縄を巻きつければ完成である。

背負子作りの続きは次回(第5講 2/10)に持ち越された。


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