「つむぎの杜」4日目(上映会、トレーシーのアトリエ、宮津の海から)


今日は母屋の「つむぎの杜」で『杜人』上映会が3回おこなわれる。1回目の上映までの間に残りのカヤ葺きを片付けたい。この3日間、全日汗ばむほどの好天に恵まれたが、昨晩から風が出て今日の予報は雨らしい。

全部屋根掛けすると中は暗くなるので内部の貴重なショット。これは小屋梁の中央に掛けた竹から自在掛けを吊るしている箇所。フックはこの地の伐採木から採った二股枝を僕がナタで加工したものだ。

足場を掛け左半分を僕のリードで縛り上げ、左半分は若者2名でやってもらうことに。

今回、20代のカップルが2組フルで参加してくれ、興味をもって積極的にバリバリ動いてくれたのである。彼らと縄文小屋との組み合わせは非常に象徴的であると思う。

最後に最上部のカヤの縫い目を覆うように割り竹をかぶせて締め上げる。ここで上映会の時間が来てしまったのだが、彼らは「この作業を仕上げたい」と言ってくれ続行してくれたのだった。

10:00の『杜人』上映会開始。実は僕はパンフレットのイラスト制作のために監督の前田さんから事前に完成映像を見させてもらっていたのだが、一般公開になってこのように鑑賞するのは初めてだった。

上映終了後、僕が紹介されてプチトークと質疑応答の時間を持つ。その後昼食となり外は雨が降り出している。縄文小屋の屋根の完成はこの雨に間に合い、しっとりと濡れ出したカヤが濃く色づき始めていた。食後のお客さんはもちろん興味津々で縄文小屋へ向かう。

すでに火が焚かれていた。前夜の熾火がかすかに残っていてすぐに着火できたとのこと。

京都のアマチュア音楽家の方がジャンベを叩いてくれる。

聴き入った後、皆でジャンベ体験。

僕は次のプチトークまでの時間、近所の陶芸家の家に向かった。毎回つむぎの杜に行くたびに顔を出してくれるカナダ人の女性トレーシーさんのアトリエである。車で20分ほど北へ、福井との県境に近い集落にある。途中、たくさんの茅葺き民家(すべてトタン葺きになっている)が現れる。

到着。噂には聞いていたが素敵なアトリエだった。

壁は煉瓦積+木造で仕上げてあるらしい。かなり本格的な造りである。

チャイを淹れてくれた。台所がヒノキの無垢板で作られたもの。

このリビングから見る前庭がすばらしい。奥の小川は護岸されているが花崗岩の間知石による石積みなので目地に植物が生えている。だからこの庭の樹木や苔類も冴え冴えと状態が良い。

彼女は1961年生まれと僕とほぼ同世代だが、カナダのトロントで生まれてカリフォルニア大学在学中に日本へ。何度か行き来したあと91年にここ綾部に移住したというから、移住31年という田舎暮らしだけでも相当なツワモノ(❗️)である。作品も骨太でタダモノではない💦

トレーシー・グラスのHP

工房や窯も見せてもらったが、特殊な薪窯ですばらしいものだった。また、釉薬に使われる様々な木々の薪灰ストックの甕がどっさりある。トレーシーはおよそ20年前に韓国人のパートナーを亡くし現在は一人暮らし。「こりゃ絶対に弟子とらないともったいなさすぎるよ❗️」と思わず口をついて出てしまった。

長居して話を聞きたかったが次の上映の終了までに戻る。

道の方からも縄文小屋がチラリと見えるのがわかる。そういえば朝から近所の方が見に来ていた。

雨が上がった。水を吸ってカヤが落ち着いてきたように見える。

3回目の上映を終えて、夜の縄文小屋へ再び。今度はハープの演奏が奏でられる。映画だけの参加者もこのスペクタクルに大歓喜である(笑)。

今宵はまた強力なゲストを滋野さんが連れて来てくれた。日本三景の一つ「天橋立」のある宮津で漁師をしている本藤靖(ほんどう・やすし)さんである。滋野さんは本藤さんから直接魚を仕入れることもあるらしく、それを絶賛してやまない。今回はマダコを持ってきてくださったのだが、その味が・・・

もうお醤油がいらないほどおいしい❣️ というか、タコの味が強いので醤油をつけてしまってはもったいない。途中、本藤さんの提案で練り芥子を薬味に食べたが、これも独特の味変になって旨い。

本藤さんは元・水産試験場の研究者という異色の漁師なのだが、現在の山からの養分が入らない海中事情に憂いており、今回の『杜人』は大変興味を持って観てくれたようだ。驚いたことに料理人でもあり、2016年から自宅を改装して限定的な居酒屋までされているという。宮津の海は地下水が豊富で若狭湾の中でも稀有な場所なんだそうだ。↓こんな商品開発もされている。

しかし新しく環境問題を語り実践しようとすると、漁協など古い組織との確執が大変らしい。これは本当に一次産業のすべてに言えることなのか・・・僕も林業関係において辛酸をなめてきたのでよくわかる。が、時代は変わって来ている。今朝の2組の若者をみてもそう思うのである。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください