2014広島土砂災害の現場を歩く/その2


翌日、もういちど八木地区へ。

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山林に続く道をみつけたので徒歩で上がってみる。

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不法投棄禁止の看板のある広葉樹林の先に真っ暗な人工林が待ち構えていた。

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やや若い、典型的な荒廃人工林(ヒノキ)だ。植えてから間伐は1回もしていない。

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が、崩壊地に向けてトラバースしていくと、いくつかの伐り株がある。プロがよくやる伐り捨て間伐の「斜め伐り」の跡である。

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崩壊地はまばゆく陽が落ちている。

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圧倒的な土石の量に度肝を抜かれる。谷という感じがない。むしろ沢筋に石が小山のように盛り上がっている。

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これらが流木とともに住宅に飛んで行ったのだから、直撃受けたらひとたまりもないだろう。

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転がっているヒノキは土石にもみくちゃにされ、幹に皮がついていない。

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その幹長に比べて根は貧弱である。このような樹形はまた、災害時には滑り落ちやすく危険なのである。

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土石の川の中に広葉樹が耐えて、ぽつんと立っていた。

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幹が石で叩かれて皮がむけている。それでも倒れずに立っているのだ。

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やや上手には広葉樹の雑木林が残っている。かつて薪炭林として利用されていたのだろう。

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アベマキの大きなどんぐりが多数落ちて、中には根が生えだしているものもある。

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林の中にところどころ深さ0.7~1mほどの穴が開き、そこから水が吹き出したような跡が、何カ所かある。

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ヒノキの根はひげ根のように細く貧相である。1988年の航空写真ではこの辺りは草地になっていたので(こちら)、逆算すると27~8年生のヒノキということになる。

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地面の近くから幹分かれしているアベマキは、伐り株から萌芽更新された歴史を示している。広葉樹は伐採しても根は生き続け、伐り株から芽が出てくる。この性質を利用して、植林することなく山を再生する技術を「萌芽更新(ぼうがこうしん)」という。幹は若くても、根は太く深いので土をつかむ力は大きい。

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さらに広葉樹は落ち葉が腐葉土をつくるので土が痩せない。しかし、肥料を得るための落ち葉かきを頻繁にやったり、伐採を極度に行なうと乾燥化し、痩せ地となり、アカマツしか生えないような山になってしまう。花崗岩地帯の瀬戸内の山林は、このようなアカマツ林が非常に多いのであって、そのアカマツがマツ枯れで壊滅し、現在は広葉樹が自然再生している(尾根などの乾燥地ではネズやツツジ類などの灌木が多い)。

自然再生した広葉樹林はほんらい強い根を張り、崩れにくい山になるのだが、やはり人の手によって適度な間引きをし、太らせる木を見つけて根張りを強くするほうが、より強い山になるだろう。ここでは、モザイク状に人工林が植えられたがそれらは荒廃し、残された雑木林は放置され、枯れたアカマツ林の広葉樹再生林もそのまま。加えて早くからマツ枯れ防除の空中散布や、工業地帯の酸性雨によって表土が痛めつけられている。

緑の点線が今回歩いた所である。これを見ると沢沿いまでヒノキを植えていたことがわかる。沢沿いは自然林を残すのが大切なのだ。ここに大きなケヤキなどが残っていればよかったのだ(もちろん沢筋・扇状地に家を建てないということが最も大事だが・・・)。

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赤線が崩れた所である。

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太田川の対岸に渡って、見通しのよい名所から今回の崩れた箇所を双眼鏡で観察してみると、細かくモザイク状に人工林が多数あることに驚いた。

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赤矢印の部分が人工林だ。やはり、前のブログで書いたとおり、人の手でいじりまわされたた山であることは確かで、とくに谷沿いは大きな根系が発達するような、太い木が育つヒマがなかったと考えられる。

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おそらく山林所有者は細かく分かれ、不在村地主も多く、このままでは間伐もされず放置されたままになってしまうだろう。

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沢沿いには人工的な砂防堤を造ることも重要だが、住宅地が山に迫っている場所では大型機械も入れない。バックホウ1台が入れるだけの作業道をつくり、現地の石や間伐材で石積みや丸太組みを造ったり、植林だけでなく、萌芽する伐り株や広葉樹林の表土を石積みにはさみ込む自然工法を採用して、災害のない豊かな山を再生されることを願う。

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▼現地を歩いた動画をアップしました。

追記:おりしも次のようなニュースを発見した。

◯(財)広島県農林振興センター/民事再生へ、負債額は約530億円
http://n-seikei.jp/2012/12/post-12862.html

昭和40年広島県の全額出資により設立された県造林公社が前身の(財)広島県農林振興センターは、山林地権者と契約して、山林にヒノキやスギを植えて植林、その木材を販売して収益を配分する「分収造林事業」を業としていた。これまで、広島県と日本政策金融公庫から資金を借り入れて事業を続けていた。

しかし、国産材の価格下落で収支が悪化し、同事業による赤字が累積した事から借入金が膨らみ、事業を継続しても債務返済の目処が立たない状況と判断し、借金チャラ目的に今回の処理を意向している。負債額約530億円のうち、これまでの天下りや縁故者の役員たちに対し、どれほどの報酬や退職金が支払われてきたのであろうか。天下り用に税金の無駄使いし放題の財団法人である。

以上、抜粋。

おそらくこの阿武山の山林にも、このような分収造林で破綻した放置林があることだろう。

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追記2:武田邦彦/「記録的」がもたらす災害(3) 天気図と広島の水害
http://youtu.be/RggBXZlWOXI

このなかで武田氏は、今回の豪雨を「観測史上初めて」と表現するのは行き過ぎであり、そうすることで行政側は危険個所に住宅を造成させてしまった非を逃れようとしている、と語っている。


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