食養の世界では生野菜はあまり推奨されない。陰性が強い素材の上に、陰性の食べ方だからだ。しかし、ちょっと暑くなってきたし、なにしろ苗を貰って植えたサラダ菜がどんどん大きくなって、2株植えたパセリもどんどん葉を茂らせるので、朝からたっぷりサラダを♬
話は変わるがyoutubeの「本要約チャンネル」で船瀬俊介『牛乳のワナ』を見た。乳製品がよくないのはマクロビでは常識だが、この本には未知の情報があってちょっと驚かされた。
それはプロローグに書かれた『スポック博士の育児書』の話で、この本は1946年に発売され全世界で5000万部も売れて世界42カ国に翻訳され「聖書に次ぐ大ベストセラー」とまで言われた本なのだそうだ。
著者は肉と牛乳を勧めていて「粉ミルク」育児が世界中でムーブメントになったのだが、のちに牛乳神話が崩壊する科学的エビデンスが続出してスポック育児は崩壊する。
その後の話がすごい。スポック博士は病気になりアメリカでマクロビを広げていた久司道夫に食事指導されベジタリアンになって健康を取り戻す。知友となった久司氏がその育児書を一読して驚愕。マクロビとはまったく真逆のことが書かれていたからだ。こんなまちがった育児法が広まったら人類は滅びかねない。
「子どもに肉や牛乳を与えるのはおかしい」「アンタ、このままじゃ地獄に落ちるよ」
と久司氏は肉や牛乳がいかに身体に有害か証拠の山を突きつけ、直談判を迫り、スポック博士は懺悔して自らの大ベストセラーのあやまちを認めて、改訂を重ねたというのだ。
この本、日本ではなんとあの『暮らしの手帖』の花森安治が絶賛して訳書を世に送り出したのだそうで、当時、花森氏に心酔していた船瀬さん自身も買い求めていとこの出産祝いにプレゼントしたらしい(笑)。
ベジタリアンに転向した博士は改訂版のなかで「健康になるには、牛乳や肉は、必要ない」と書き、育児読者の父母から猛講義が殺到したという。改訂は数回に及び、1998年の第7版では初版の内容とまったく変わって
「2歳になれば乳製品は必要ない。植物食のみ食べさせなさい」「子どもも、大人も、肉、鳥、魚、乳製品を食べない食事こそベストです」
と、これまでと真逆のことを書いている。実はこの話は海外の消費者団体や市民グループには広く知られており、船瀬さんは1980年の香港で開かれた世界消費者大会で欧米の参加者からその情報を聞いたのであった。
さて、amazonを調べてみると日本の訳書は第6版に当たり、本国での最新版は2004年に発売された第8版になるそうだ。レビューによれば6版まではまだ牛乳・乳製品を完全否定していないらしい。牛乳・乳製品に関する記述が大きく変わっているのは7版以後なのだ。というわけで日本ではこの話はぜんぜん知られていない。
と、ここまでしつこく書いたのは、僕自身もこのスポック博士の育児法の犠牲者だからだ。昭和30年代の当時は母乳で育てることはダサいことで、粉ミルクを使うことが最新でカッコいいという風潮があったのである。
僕は1987年28歳のときに長女が生まれて初めて父親になったのだが、そのとき自然食のことを勉強して、真弓定夫さんの本に感化された。母乳(とくに初乳)の重要性に気づき、娘たちの育児に粉ミルクはいっさい使わないように、保育園のときも冷凍母乳を飲ませたりした。
その後、生活クラブの牛乳は家族でちょっと飲んだりしたけど、粉ミルクだけは絶対に使わなかったのは本当に良かったと思っている。僕は子供のころ病弱で苦しくて嫌な思いをたくさんしたが、娘たち3人は大きな病気をすることもなく元気に育った。戦後一貫して粉ミルク育児反対の主張をつらぬいてこられた真弓定夫氏に言わせれば、
「粉ミルク育児の目的は、結局メーカーの金儲けにつきる」
それにはGHQの後押しもあったにちがいない。僕はそのあとも学校給食でさんざん牛乳を飲まされ白パンにマーガリンを食べさせられたのだ。フリーになって自炊を始めてから米を炊いて味噌汁を作ることが多くなり、習慣的に牛乳を飲まなくなり、そこからはほとんど病院に行ったことがない。
まあ大人になってたまに嗜好品としての乳製品ならいい。そりゃたまにはピザだって食いたいしヨーグルトの入ったカレー料理もいいもんだ。
でも人の人生を左右する赤子の生命戦を、金儲けのためにはなんでもするということが、いまだに信じられないな。とまれグローバリストたちは世界戦略でずーっとこれをやり続けているのだ。環境問題も固有の文化の破壊もそうである。
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『牛乳のワナ』はamazonの試し読みでプロローグが読めるのでぜひご一読を。