しっぽくを食べる


四国に引っ越して4年目。讃岐うどんに関してはいろいろな食べ方を試してきた。かまあげに生卵をからめる「かま玉」。つけだしで食べる「かまあげ」や「ざるうどん」。それぞれうどんの持ち味が引き出されて美味しい。が「しっぽく」だけは敬遠していた。

しっぽくうどんとは讃岐(とくに東讃地域と中讃の一部)の冬の代表的な郷土料理で、数種類の季節の根菜や油揚げ、鶏肉などを出汁とともに煮込み、その汁をゆでたうどんにかけたものだ。

長崎で「しっぽく料理」というものあるが、それは大皿に盛られたコース料理を円卓を囲んで味わう形式だ。「しっぽく」の語源は何なのだろうか? 漢字で書くと「卓袱」。「袱」は祝儀袋を包むときになどに使う「袱紗(ふくさ)」という漢字に使ったり「袱」単独で「ふろしき」と読む。「卓袱」は「卓上のふろしき」ということになり、すなわち大皿の意か? 「七宝の具」で「しっぽく」となったという説もあるそうだが、まあ「たくさんの具」を意味すると考えていいのだろう。

さて、なぜ「しっぽく」だけは敬遠していたのかというと、私の育った関東の茨城には「けんちん汁」「けんちんソバ」というやはり根菜を汁で煮た郷土料理があって、子供の頃からさんざん食べさせられてきた思い出があるのだ。

家庭でつくるけんちん汁というのは、具材をまずゴマ油で炒めてから、醤油の入った出汁でいきなり煮てしまう。だから表面は油膜でピカピカ、出汁は真っ黒、という独特の風情(あまり食欲をわかせないw)を呈する。

けっして嫌いなのではないが、まあ特別好きともいえない。根菜を似た汁物などは、そもそも家庭で食べるものであって、店で食うものではない、という先入観があることも手伝っている。

ところで讃岐うどんを食い続けて困るのは、それ自体あまり健康食ではないということだ。

精白した小麦ばかり食っていたのでは繊維不足、ミネラル不足になること必定で、さらにつけあわせに魚介の天ぷらばかり食っていると、野菜不足にもなるわけだ。

そこで昨年くらいから、うどん屋でもソバを置いている店では、あえてソバを食べることも多くなったのはこのブログの読者の方々もご存知であろう。

ここで「しっぽく」が浮上するわけである。ある日、根菜とやさしい出汁の味を求めている自分がいたのであった。食べてみると、これが案外いけるのだ。

この讃岐のしっぽくはあくまでも汁は透明に近く、根菜も素直に自分の持ち味を保持している。けんちん汁とはここがちがう。讃岐の甘味には辟易するところがあるけれども、この京都を思わせるうす味系は大好きなのだ。

ただし、これが讃岐の「うどん屋のソバ」と調和するかはまた別の話だが、うどんは実によく合うと思う。しっぽくの名店として有名な「松岡」で、しっぽくうどんを食べてみて、さらにその思いを深くしたのである。

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「オマエもそんなものが美味いと感じる歳になったんだよ・・・」と自虐する自分がいないわけではないが、「しっぽくそば」「うどん店のそば」というTagをもつ地元ブロガーの食ブログなども参考にしながら、この冬からしっぽくを探す旅を加えようと思います。


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