「大地の再生」ライセンス講座@上野原2020.5月/2日目・丹沢登山(後編)


登りの途中途中で矢野さんは水切りを始める。登山道に沿って流れてくる雨水を分散浸透させるための施工である。

休憩をはさんで、皆で作業をやってみる。画面右下にあるモミの大樹が弱っているが、この作業でモミの木は確実に元気になるという。

再び登り。下層植生のほとんどない人工林の尾根道になる。

林道の上部に出て、ここでお昼。各自、マイ弁当箱につめた玄米ご飯に漬物類、行動食など。風があって寒い。

ここからは林道を歩く。

林道にも水流ができあがっている。それを分散浸透させるために石を置き、

倒木を並べる。

完成。

いくつか沢を横断していくのだが、沢筋はきまってガレており、道が破損しているのだった。

コンクリートの擁壁の止めで斜面上部がオーバーハングして土が削れている。

途中で見た金属フレームに石積みの堰堤。「鋼製枠床固工」と呼ばれるもので、マットなコンクリート打ちよりは空気通しはずっといいだろう。プレートには「平成13年度 復旧治山事業 神奈川県林務課」とある。県の林務課による治山事業なのだ。

崩れてきた石や倒木で林道が広範囲に破壊されている沢筋。矢野さんが先頭でルートを開き、慎重に横切る。

ヒラタ沢の橋には落差のある素晴らしい滝がかかっていた。この林道周遊コースのハイライトと言っていいほど見事なもの。

林道が神之川に近づいてターンする場所に来た。広河原と呼ばれる場所で、谷が石で埋め尽くされ平坦になっている。立て看板によれば昭和40年の台風で大氾濫で原生林がなぎ倒され、その後県が莫大な費用をかけて土砂流出工事を続けてきたという。確かに地図上でも彦右衛門沢にはたくさんの堰堤マークが確認できる。

この破壊カ所だらけの林道には似つかわしくない立派な橋が現れた。

上部はモミを交えた針広混交林になっている。このような天然林が残っているのはホッとする光景だが・・・

しかしそのような樹林もよく見ると疲弊しているのがわかる。

春先に古い葉を落として新葉を出すカシ類などの常緑樹が、まるで枯れ始めたかのような弱々しい葉色をしている。対岸には気水脈をせきとめる道路などはないのに、尾根の植物が弱っているのだ。やはりこれはただ事ではない。

タヌキ発見! 落石事故にでも遭ったシカなのか、その腐肉を食べているのだった。

無事にゲートをくぐる。雨が上がり始める。

里山の森林のみならず、奥山の自然林、そして人工林の荒廃が水切りのコントロールひとつでかなり改善するなら、これほどインパクトのある「大地の再生」のアピールはないと思う。どこかに定点観測できるフィールドを見つけてぜひ実践してみたい。

林道もここまで崩れ壊れていると、歩いていても単調さは感じずむしろ楽しい感じ(?)がした。おそらくこの林道をふたたび整備するには膨大な予算がかかる。しかし「大地の再生」的な補修で安全に歩けるように、そして周囲の自然が再生に向かう処方をするという程度なら。それほど予算はいらない。

そしてそんな道はハードな登山道は歩けない子供やお年寄りも楽しめる散策ルートになる。車止めに向かって歩きながら、そんなことを考えた。

▼今回のルート

地理院地図より、赤点筆者

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