今回のライセンス講座の舞台は八ヶ岳南麓。僕は大卒後に東京でサラリーマンになったのだが、2年後の1983年に離職し、八ヶ岳の稜線小屋(赤岳石室/現・八ヶ岳赤岳展望荘)でアルバイトした。その後、東京に戻ってイラスト修行一直線、八ヶ岳は人生のターニングポイントというべき記念すべき山なのだ。
取材を減らして執筆に専念したいとはいえ、重要な取材は続けねばならない。今回は八ヶ岳、しかも矢野さんらが7年前に作った「縄文小屋」のメンテナンスと聞いて、これは見ておかねば・・・と。
その縄文小屋は北杜市の自然農場と体験宿泊施設の「野風草(のふうぞう)」の庭先にある。そこから遠望する八ヶ岳がまたすばらしい。が、近年山肌の斜面崩壊がひどいらしい。双眼鏡で確認すると土が露出した無立木エリアがかなり広がっているのが確認できる。
そして反対側の南アルプス、甲斐駒ケ岳。こちらも昨年の19号台風で登山道の崩落と倒木被害が起きた。今回「南アルプス林道」が広河原〜北沢峠間で大崩壊しており、復旧に数年はかかると言われている。
午前中は縄文小屋の周囲の草刈り。冬の草刈りのわずかな整えが、春先に効いてくるそうだ。
テラスで昼食。今回は野風草の主人舘野さんのマクロビ料理をいただく。
野菜はもう十数年自家採種を続けた自然農でとれたもの。天然酵母のパン。豆乳のシチューなどなど。
明日は曇る予報なので、今日は午後から八ヶ岳に近づいて奥山の状況を見に行くことになった。ここが八ヶ岳農場の展望台付近にある無立木地帯である。斜面のがれ場ではなく、踏み跡も激しい場所ではない丘のような所なのに、まるで除草剤でもまいているかのように植物が消えている。
矢野さんがポイントに水脈を切り、点穴を穿っていった。しかし、ここから仰ぐ赤岳はすばらしかった。バイト時代に何度も遊びに上がった頂上小屋が確認できる。
次いで川俣川に流れ落ちる名爆「呑竜の滝」へ。川俣川はよどみに黒い泥アクが堆積して水の色が冴えない。呑竜の滝の岩の苔や木々に元気がない。別荘や牧場開発、高原道路など古くから南麓は開発が進んでおり、その詰まりがこの表情をもたらしている。また、国土地理院地図でも確認できるがここから源流にかけて砂防堰堤がかなり造られている。
夕食は野菜たっぷりのお雑煮。自家製の本物のゆべしが美味しく、珍しかった。
夕食後は薪ストーブの暖に包まれながら、スライドで縄文小屋建設当時の写真などを見せていただく。
「大地の再生」が講座形式でスタートしたのは7年前だが、ここ野風草の舘野さんのアイデアから始まったのだそうで、今回は記念すべき回帰なのだった。
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※技術レポートは「大地の再生HP>活動事例レポ」に掲載しています。