千葉市内のホテルを早朝に出て、館山道路から南下してみる。道道に自衛隊の災害派遣車両や、電力会社のクレーン車などが目立ち始める。高速道路の両側に、早くもあきらかに今回の風害と思われる山肌が現れて、まず袖ヶ浦のICで降りて見ると、街道沿いに人工林の崩壊跡がすぐに見つかった。
スギだけでなくヒノキも混じる平地林だった。かなり太いものも折れている。
山武杉の独特の形状をしている。このコブの巻き込みから「溝腐れ病」が発生し、そのせいもあって放置化が進み、形状比の高い線香林になっている。
もう一度高速に戻ってさらに南下すると、道路からかなり広範な折れ跡が見えたので、その先の君津ICで降りて、カーナビを頼りにその近くまで下道で戻ってみた。自衛隊の車両が見え、民家の脇の山がスギと竹を巻き込んでバキバキに折れている。
さらに八幡台と書かれた住宅団地へ向かう森の中の道に迷い込むと、壮絶な崩壊跡に出くわした。
なるほど、送電線の鉄塔被害だけではないのだ。こうして折れた木々が各所で電線を巻き込み、再生工事を手こずらせているのだ。
溝腐れ病のスギが目立つが・・・
その年輪はあんがい緻密で、このスギなどは年輪を数えてみると60~70生はありそうだ。うまく間伐を入れて収穫すれば横架材を採るに十分なサイズである。しかし、このように風害で折れ曲がった木は縦に割れが入ることが多く、建築材としては使えない。もったいないことである。
尾根に出ると自衛隊や電力会社の車両に出会う。
このようにカシなどの広葉樹と混交状態になっている場所は、スギ・ヒノキでも折れが少ない。
これはヒノキの根倒れ。風の凄まじさを物語る。
対岸に見える高速道路のきわにまた崩壊地が見えた。
行ってみると・・・
これまで全国の人工林の崩壊地を私ほどたくさん見ている人間はいないだろうと思うが、これは今まで見た中でも凄惨なものであった。
かろうじて残った立木の生き枝の状態を見てほしい。樹高の1/10ほどしかない。こんな超過密な線香林はいつ折れてもおかしくない異常な林分である。京都の北山杉の放置林も同じようなものだが、間伐が遅れに遅れたこの木更津の山林は、それ以上の異様さであった。
しかし、今になって「人間のエゴで間違った林業施業をした結果」だとか「ここまで放置したのは行政の怠慢だ」などと言っているが、何故、どうしてこうなるまで指をくわえて見ていたのか?
森の学者も、研究者も、森林組合も、マスコミも、森林に関わるNPOや市民団体も、いったい今まで何をしていたのだ?!!
そしてこれからいったいどうするつもりなのか?
これまで、多くの森林組合では本数で3割くらいし か伐らない弱い間伐を続けてきた。たくさん伐りすぎ ると山主に悪い印象を与え、かつ残した木が風や雪で 折れたら困る。なにしろそれで補助金が貰えるのだか ら、たくさん伐る必要はない。ところが弱い間伐では またすぐに暗い山に戻ってしまう。伐っても伐っても 本当の間伐になっていない。しかも森林組合が手をか けている森というのは、日本の人工林のうちのごくわ ずかで、あとは放置されているところが多いのだ。放 置されても木々はわずかだが生長し続けている。状況 はどんどん深刻になっていく。(拙著『「囲炉裏暖炉」のある家づくり』/6章 木の家はどんな森を欲しているか?)
動画をアップしておこう。これから日本の各地でこのような被害が続出してくる。
スギや台風が悪いのではない、これは人災なのだ。