薪ストーブより囲炉裏暖炉が好きな5つの理由


Gomyo倶楽部の活動の帰りに、陶芸・彫刻家の友人に呼ばれてアトリエに寄ってきた。ここでは新たな交流施設を計画中だそうで、本格的な木造の建物がこれから作られる。その暖房装置の選択について相談したいという。

田舎暮らしの暖房装置といえばやはり薪火のものだろう。Iターンの人たちの多くはそれを望む。だが、古くから地元に暮らす人たちは、高気密でエアコン冷暖房の快適な暮らしを求める人が少なくない。

しかし、今回すでに天然乾燥材の無垢の木造で作られることが決まったそうなので、エアコンの選択はよくないだろう。エアコンの風は木に割れや曲がりを誘うからである。

では薪ストーブということになるわけだが、何度か僕の家を訪れているその友人は囲炉裏暖炉を見てしまい、これにぞっこんなのだ(笑)。「囲炉裏暖炉の設置、なんとか皆を説得できないだろうか・・・」、僕に「プレゼンのための知恵を貸してほしい」というわけである。

アトリエでお茶を飲みながら、では・・・と話を始めると、次から次へと地区の人たちが現れて、話を聴いてくれた。薪ストーブでなく囲炉裏暖炉が好きな理由を、僕は次のように説明したのである。

1)直に火を感じることができる

2)年間を通して使える

3)枯れ枝でも楽しめる

4)灰の部分でいろいろな調理ができる

5)囲炉裏によってコミュニケーションが生まれる

以下、各項目を説明していこう。

直に火を感じることができる

薪ストーブは耐熱ガラス越しに炎を見るもので、炎や炭の熱を直接受けることができない。耐熱ガラスは熱をあまり通さない。つまり、薪ストーブは鉄の箱が発する熱(熱くなった空気)を感じているわけである。

囲炉裏暖炉はちがう。炎と熾炭(おきずみ/薪が燃焼の過程で作る炭)が発する熱を真っすぐ受けるわけで、これは最も重要かつ根本的なちがいである。炎と炭独特の温かさは直接的であり格別なものである。とくにお客さんにはこれを味わってほしい。

年間を通して使える

薪ストーブは寒い季節は便利だが、使わない季節が長い。とくに西南日本ではそうだろう。山では春や秋の爽やかな気候のときがある。鳥や虫たちが鳴いて、自然が最も感じられる季節だが、そんなときも囲炉裏暖炉は「焚き火」感覚で楽しめる。

夏に焚いてもいい。窓を開け、網戸をかけておけば虫が入らず沢風が入ってくる。炎が空調になって風を引き込んでくる。山なら夏の夕暮れに涼しいときがある。ヒグラシの声など聴きながら、火を焚くのはロマンチックでいいものである。

枯れ枝でも楽しめる

薪ストーブは薪を大量に食う。その薪づくりもけっこう大変で、広葉樹の薪を伐採し、さらに薪割りするのは頑健な人しかできない。とはいえここは山林も多く、現役の木こりもいる。薪には困らないだろう。

だが、僕が言いたいのは囲炉裏暖炉は木工の木っ端、枯れ枝でも楽しめるということである(薪ストーブの場合、焚き付けにしかならない)。枯れ枝はいま山に行けばいくらでも落ちている。枯れ立ち木も多い。それらは子供でも老人でも集めることができ、その作業は山の掃除・観察のきっかけにもなる。

枯れ枝はすでに乾いているので数日積んでおけばすぐに使え、意外に火保ちがよく、やわらかで優しい炎を立てる。この独特の炎は、お年寄りにはきっと懐かしいものだろう。

灰の部分でいろいろな調理ができる

薪ストーブにない最大の利点といっていいかもしれない。灰の上にゴトクを置き、薪が燃えながらできる燠炭を集めて、そこで煮炊きができる。串刺しで魚や肉を焼くこともでき、網で炭火焼きもできる(臭いはダクトから抜けて、部屋にはほとんどこもらない)。これが楽しい。

灰は実に便利なもので、自由に数カ所同時に料理を作ることもできる。また保温調理にも燠炭は活躍する。おでんやカレー、ポトフなど大鍋の保温に、放っておけば自然に消えていく燠炭は便利なのである(薪ストーブの天板では火力が強すぎる)。

囲炉裏によってコミュニケーションが生まれる

囲炉裏暖炉は薪をうまくいじってやらないと炎が消えてしまう。薪を上手にくべるテクニックと手間がいる。火吹き竹も使えるようにしなければならない。が、このような施設ではそれがコミュニケーションを生んで、むしろ良いのではないだろうか。

薪ストーブの窓は一面だが、囲炉裏暖炉の炎は180度の視点から楽しめる。だから多く居の人が輪になって集うことができ、会話も生まれやすい。子供たちも自分で集めてきた木を燃やせば誇らしいだろう。囲炉裏は老人から昔話しを聴くコミュニケーション・ツールとしては最適なのである。

以上、いかがだろうか?

もちろん囲炉裏暖炉の欠点がないわけではない。大部屋では真冬には囲炉裏暖炉だけでは寒いときもあるだろう。そのときは火鉢を点在させて補えばよい。ここは良質な炭の産地なのだから(囲炉裏暖炉のダクトがあれば換気はまず心配ない)。

また、直火ということで火事の心配をする人もいるだろう。しかし使ってみればわかるが、囲炉裏暖炉は放置しておけば自然に火が消える。薪ストーブのようにガンガン焚かないので煙突も手で触れるほどである。

このようなパブリックな場所で囲炉裏暖炉が使われるならば、それだけで大きな話題になり、観光客だけでなく視察の人も訪れるようになるだろう。日本の山の恵みを再認識する、いいきっかけになる。

そんな広がりを僕は期待している。

Gomyo倶楽部、活動報告>


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