取材先は屋久島である。先日の豪雨(50年に一度の記録的な大雨と報道)で登山者が閉じ込められたニュースがあった。だいぶ崩れているらしいので調査に行く。矢野さんとは明日の飛行機で合流。
夜に鹿児島に着けばいいのだが、早めにアトリエを出発。書類のチェックをしているうちに、瀬戸内海を見る余裕もなく岡山に到着。乗り換えは8両編成「みずほ」大阪発鹿児島中央行き。九州新幹線に乗るのは初めてだ。昼間は自由席も空きがあり、窓際のコンセント席に楽々座れた。
前回の駅弁の添加物に恐れをなした・・・というわけでもないんだが(笑)、冷やご飯とハチクの煮物が残っていたので、おにぎりとおかずを持ってきた。それと水で車内飯。
そして下駄持参。この桐下駄に履き替えたときの開放感はたまらない。鹿児島市内には天然温泉がたくさんあるのでこれで入りに行くという寸法。
空いていた新幹線も福岡駅でどどっと満席になり、それが熊本駅でほとんど降車。またまたのんびり気分に鹿児島中央駅に着く。駅には観覧車が載っている。そして路面電車が走っている。
最初に鹿児島を訪れたのは東京に住んでいた頃だが、当時九州のなかで鹿児島が最も行ってみたい場所だった。もちろん新幹線はなく、旧鹿児島駅は古びた駅舎で南国風情がぷんぷんしていた。ちょうど桜島が噴煙を上げていて、降灰の中を驚きながら歩いた。今はなき「のぼるや」でラーメンを食べ、フェリーで桜島に渡って散策し「あくまき」を買って食べ、「世の中にはこんな食い物があるのか!」とまた驚いた。
魚屋でカラフルなヒオウギガイやウチワエビの異様に感嘆し、帰りの電車で、海を眺めながらお土産のさつま揚げをかじり、いも焼酎を呑んだのをよく覚えている。さつま揚げの甘さにいも焼酎が合うのに感心したものである。
ホテルに荷物を預け、遅い昼飯へ。さて、鹿児島といえば黒豚とんかつ。これまでの屋久島旅の行き帰りを利用して、有名店ベスト3「川久」「丸一」「黒かつ亭」を食べてみたが、中でも安くて旨いのが「黒かつ亭」。まだランチに間に合う時間帯だったので、ヒレとロースを組み合わせた「黒かつ亭ランチ」970円を食べてみた。
しかし、とんかつに至っては確実に「東京とんかつ」の勝ちだと思った。前にも書いたが黒かつ亭の欠点のひとつは店内空間と内装のチープさだ。でもご飯はかなり美味しくて、ビールを飲んでいるというのにキャベツとご飯をしっかりおかわり(無料)してしまった。
食後、その足で温泉に向かう。もちろん下駄履きである(笑)。黒かつ亭から1km弱にところにある「西田温泉」へ。
入浴料390円。中は古い銭湯風というゲキ渋だが、天然温泉で飲泉用の柄杓も置いてあり、かなりの熱湯であった。
湯上りの散歩。名所、建築めぐりをする。ザビエル公園。宣教師フランシスコ・ザビエルは鹿児島・祇園之洲に上陸。約1年を鹿児島で過ごした。これはザビエルと薩摩人ヤジロウ、ベルナルドの3人の等身大の像。
正面にある鹿児島カテドラル・ザビエル教会。ザビエル渡航450年記念聖堂のコンペによって建てられた聖堂。切妻屋根の形状は、ザビエル渡航と言うことから船をイメージ。設計は坂倉建築研究所。中は入らなかったがステンドグラスを透過した光ですごく色鮮やからしい。
こんなプレートを発見♬
BIGIビル。安藤忠雄の初期建築。
そうそう、このスチールのドアと黒タイル、よく使っていたよね。
西郷さんの像。手前に記念写真を撮る丘がしつらえてある。眺めていると「写真お撮りします」シルバーボランティアが寄って来る。
鹿児島市中央公民館。国の登録有形文化財だが今も現役で使用されているそうな。
朝日通りから見る桜島。これだけでも迫力なのだが、噴煙が上がっているともの凄い光景になるはず。
ちょっと気になるピザ屋さん。
「T-flat」。鹿児島市の建築設計事務所「アトリエ環」の設計。アーケード通りに面して建つ5階建の複合ビル。
裏側からアーケードを見る。
アーケードからの正面。長い階段が上階まで一直線に続く。かつて高松のアーケードにあった浜野安宏+安藤忠雄のステップビル(2006年に取り壊し)を想起させる。しかし、使い勝手は悪そうだな・・・。1F奥は空き店舗になっていたし。
だいぶ歩いて喉も渇いたのでどこかカフェでビールでも・・・と思ったが、気になるコーヒー店があったので入ってみる。「珈琲 いづみ 天文館店」。いまどき、無垢の木のカウンターや家具を使うカフェが少なくなったが、ここはタモ材の棚にブラックウォールナットのカウンターとイス。
グァテマラ(サンミゲル ウリアス)をネルドリップで。 ¥650。この雰囲気・内装・カップ、そして味なら決して高くはない。
美しいコーヒーを味わいながら、旅の極上の時間が流れていく(下駄履きだけど・・・w)。
(続く)