アスファルト合材は冷めると硬化するのでバケットにこびりつく。次の作業のために、それをバールや平スコップを使って剥がさなければならない。剥がれにくいところはガスバーナーで炙ると軟らかくなる。
レーキやスコップにも張り付いてくるので、ときどき灯油を使って洗うことになる。またプレートコンパクター(転圧機)などは、ときどき灯油を染み込ませた段ボールでの底を拭う・・・という手間が必要となる。
昨日、砕石混じりの土にチップを混ぜて転圧しておいたエリアでは(朝方水をまいてセメント粉をふっておいた)、下地を作らず直接「有機アスファルト」を敷く。
ただし接着剤として乳化剤(プライムコート)を噴霧してから敷設をする。
今回はトラックの荷台を傾けて地面に直接小山を作り、そこにチップを放り込んでバケットで撹拌する。進行状況とスペースによって臨機応変に対応しなければならない。
各自、レーキの使い方に慣れてきたので、これで一気に均してしまう作戦だ。
重機を交代して矢野さんもレーキ部隊に加わる。やはり、この作業が非常に重要なキモであるらしい。
次のエリアで矢野さんは炭をまき始める。
有機アスファルトを敷く前に炭をまいたのは、この1カ所だけだった。矢野さんに理由を聞くと、ここは枕木の歩道に隣接してやや低く、水が集まるからだそうだ。有機アスファルトに水が停滞すれば中の有機物が腐蝕しやすい。その対策としての炭というわけか。
アスファルトが到着すると、適宜水をまくのを忘れない。しかし、まきすぎては冷めてしまう。水も大事だが「熱」があることもまた重要なのだ。矢野さんはこれを炒飯にたとえて説明を始める。「炒飯の水まき」で水蒸気がご飯がふっくらと仕上がる・・・しかし温度が下がりすぎたらダメなのだ。
休むことなくレーキ。ベトついてきた道具は交換する。
そして転圧。
少し離れた位置から矢野さんは高低差を確かめる。
有機アスファルトを敷くのは駐車場広場の約半分だ。そろそろ終盤にさしかかる。
陽が傾いてくる。
最後の面、車道に一番近い境界に乳化剤をまく。
最後のアスファルトが配られる。照明が準備される。
既存道路との境界部。コルゲート管が浅く埋設され、木杭で締め固めた場所である。
境目はとくに念入りに。キワの部分がきれいに納まると、美しく締まって見える。
転圧。これで有機アスファルトのエリアはすべて終了した。
全部でトラック8台分のアスファルト合材を使ったが、最後にかなりの量が余った。残り半分のエリアは砕石仕上げの予定だったが、砕石が入手できず「再生砕石」(廃材アスファルト、コンクリート、レンガ等を破砕したリサイクル材)を用いて、それに残りのアスファルト合材とチップを混ぜたものを敷き均す。
撒いてレーキで均して転圧・・・という同じ流れだが、有機アスファルトの仕上げほど精度はいらない。やはり水とセメント粉は使うが、「水はまきすぎないように」と指示が出る。
全員で最後の仕上げをする。流れるように皆が動き、気がつながって、「結」作業の真骨頂を見るようだった。「できない人も動いているうちに、できない作業ができるようになっていき、1人以上の力が生まれる」。
「再生砕石」とアスファルト・チップ・・・これを何と呼べばいのか? がちがちには固まるわけではないので表面の石は動く。しかし、砂利敷きの駐車場ほどはスリップはないだろう。そして気脈・水脈は通る。
翌朝の仕上がり写真である。手前が有機アスファルト、奥のグレーがかっているところが再生砕石仕上げだ。
こうして長い1日が終わる。私の取材は今日までの予定だったが、明日「草本類を植栽する」というので、それを見てから帰ることにした。