午後はまず土留め脇の道の段差の処理。
流木、石、土をバランスよく入れていく。
バケットで搗き固める。
クローラーで転圧する。
次、まだ残る舗装下のくぼみに石を押し込んでいく。
この箇所がほぼ完成した。あとは番線でしっかり止める。
番線は太巻きのものを3重〜4重にして使う。
重機を行ったり来たりさせて転圧。この重機はバケット容量「コンマ2」、およそ車体重量は6t程度。最近はミニバックホウも性能が良くなっているが、ある程度の車重がないと、大きな流木も運べないし、転圧も効かない。道を造る場合は「コンマ2〜コンマ25」クラスが必須である。
出すぎた杭の頭を切りそろえるのはもちろんだが、土中に挿入された流木の根や枝などが飛び出している場合、それもチェーンソーで切っておく。ビフォー、
アフター。
ビフォー、
アフター。こうして小沢の流れだけでなく水面の上の風通しを確保する。また、現場に散乱している流木のうち、空中に尖って飛び出している枝なども切りそろえておくと、風通りもよく風景が優しくなる。
いよいよ県道へ擦り付ける手前のカーブに小さな水みちができている。盛り土をする前に、枝葉をチェーンソーで裁断し、
水みちの上にかぶせ・・・
そこに土と石を載せていく。
アスファルトやコンクリートに盛り土せざるを得ない場合は、このように有機物を挟んでおくと接着剤になってくれるそうだ。
県道が見えてきた。切り土と盛り土のバランスを見ながら道を切っていく。
そして盛り土側にはやはり長い流木を土留めにする。この辺は四万十式作業道(※)によく似ている。矢野さんの場合は表土の代わりに枝葉といった有機物を、ワイヤーアンカーの代わりに木杭を多用するところが特徴的だと思った。
※田邊由喜男監修・大内正伸著『山を育てる道づくり』参照。または自著紹介へ。
幸い(と言っていいのかどうか・・・)現代日本の崩壊現場には通直なスギ・ヒノキ材が必ず含まれており、それがこのような仮復旧工事の土留めや杭の素材として最適なのである。
このサイズの杭だと杭自体の支持力もかなりある。大ハンマーでも打ちにくいのでバックホーのバケット(できるだけ角を使うとよい)で叩くのがよい。
杭と土留め丸太を番線で止める。
大きめの石をバケットで転がしてきて、法面の基部に押し付けていく。
こうして県道まで登り切った。荒っぽい造りだが、4wdの軽トラなら通行できるだろう。
と思いきや、矢野さんは再び法面の下に降りて、大きな丸太を杭の内側に放り込み・・・
そこに流木の小枝を載せ、さらに土をかぶせた。
クローラーで転圧。これでほぼ終了。盛り土(法面側)は沈みやすいので有機物と土を追加したのだそうだ。今後、様子を見ながら補修を入れ、必要ならセメントを部分的にまくといいそうだ。
このような仮復旧の道は、生活を立て直すために重要で最も急ぐべきものだ。石と土と木というバランスでちゃんと空気と水の「抜き」の機能を備えているため、次の大雨でもこの道自体が大きく崩壊することはない。
むしろ雨の度に形が整い、草が生えることでより自然親和的な、川と一体となった懐かしい昔の道ができていくだろう。植物だけでなく、道と沢の周囲は微生物、昆虫、魚類ほか様々な生き物にとっても素晴らしい住処となるはずである。
「コンクリートで本工事をするにしても、このような抜きの機能と動植物に配慮したやりかたは、現代の技術を持ってすれば十分可能だよ」と矢野さんは言う。
これに「風の草刈り」「点穴」「水切り」といったメンテナンスの概念を共有できればいい。
暗くなるまで重機を動かして、再び自治会館に戻って夕食をいただいた。私はこの夜に高松に帰宅したが、矢野さんたちは明日は因島に行きプロジェクトを続ける。
どうか、この災害が国土の再生にとって大きなきっかけとなりますように!
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