大地の再生@福島県三春町「福聚寺」再訪


早朝、ホテルを出て新幹線で矢野さんに合流する。座席で資料を行き交わせながらスタッフのwさんと3人で打ち合わせ。北海道の取材写真を見せてもらう。今日は矢野さんと私で福島県三春町の福聚寺へ。そして午後から仙台の現場に回る。Wさんは単独でそのまま仙台へ先入りだ。

福聚寺は矢野さんらが2015 年8 月から数回にわたって通気排水工事をしているが、今年6 月には敷石と有機アスファルトでの道のかさ上げと有機的石積みを取材させてもらった。その後のことは矢野さんやスタッフから度々聞いているのだが、この目で見るのが楽しみであった。

>6/15取材/福島県三春福聚寺(7)有機アスファルト

敷石と有機アスファルトかさ上げ部をタクシーで通過して境内の駐車場に入ったが、それほど乗り上げの違和感はない。

既設アスファルトとのすり寄せも、問題なく納まっている。

敷石とつながる石積みも落ち着いて、浄化槽にコンクリートが打たれて完成していた。

違和感はない。むしろここがコンクリートだけでむき出しになっていたら、山門と不調和で殺伐とするだろう。

敷石と有機アスファルトを接写。

施工時より車の踏みつけでいくらか沈んだようである。浄化槽の反対側もいい感じでプチ庭園風に。

福聚寺は庫裏(くり)の新築工事が同時進行で行われており、矢野さんはその基礎の通気工事にも関わっている。もちろん建物周りの水脈処理も行なってあり、その成果が着々と出ていて、緑の再生は見違えるほどになっている。

既設のコンクリート底を剥がしてコルゲート管の埋設、点穴処理を随所に行った水路。空気が通りはじめて雑草が生え出す。

以前はかなり湿気った場所のように思われる場所にも・・・

美しい苔が生え始めていた。

新築の建物の周りにも、慎重に通気排水パイプが回されている。

中庭の池。

水が澄み始めている。施工前は濁り水だったそうだ。水脈を入れた効果は植物再生と建物の湿気除去だけではない。池の水まで清浄になっていく。

手を入れる前、周囲の木々はうなだれ、道と暮石まわりに泥水が目立ったという。今やその姿は想像できないほど木々が息づいている。

枝垂れ桜の大樹も息を吹き返した。いくつもの枯れ枝が見えるので、かつて相当弱っていたようだ。

枯れかかったマツも再生へ。灌木周りはヤブ化して低木は草に埋もれていたが、溝や点穴で木が息を吹き返すと、根周りが元気になることで幹周りの草を抑制し、草もまた細根を出して成長が穏やかになる(ヤブが消える)。自然界の低木周りは草刈りなどしなくても、このような状態で落ち着くのが正常な姿なのだ。

墓の上部にある雑木林の道にもたっぷりの手を加えた。窪地には残土を盛り、水が穏やかに等速に流れるように施工した。泥水が出る大きな要因は雨水が走り過ぎて地面を削ること。さらに、水が走り過ぎると浸透するべき水が下流に引っ張られてしまう。

U字溝にはことごとくブレーカーで穴を開けた。U字溝は確かに便利なものだが、水が走り過ぎる。またその重さで地面を圧して、空気を遮断してしまう。ちょっとした空気・浸透穴の加工だが、矢野さんに言わせると「絶大な効果がある」という。今後は穴開き、あるいは部分的にメッシュの既製品が開発されるべきであろう。

ご住職たちも植物との共存を目指して、檀家さんに向け注意書きを立てている。

道周りに抵抗柵をつけた水切り。地中の空気通りが良くなるとドングリなどが発芽しやすい。赤土の斜面に実生苗がたくさん出ていた。

このような法面の木の根の下にできるオーバーハング穴も、空気が通るよになると半年でなくなるそうだ。

三春の城主、田村公三代の墓の脇侍にあるサクラとモミの大樹はどちらも枯れかけていたが、復活のきざしを見せている。これには宮大工の棟梁も驚かれていたという。

根周りに資材を置かれて衰弱しているヤマボウシを見て矢野さんがすかさず移植ゴテで溝掘りを始める。

この寺に来て最初にやったという坂道の歩道をメンテする。埋まった溝を切り直し、有機物(木の枝など)を入れていく。

この2本のヒノキも息を吹き返した。

敷地内を透明な水が流れているのは気持ちが良いものだ。山門前の道をかさ上げしたことが、これまでの通気通水工事の機能をさらに引き上げている。それが周囲の木々の表情に如実に表れている。その復活した木々の根がまた地中の空気通しを良くし、土地の水はけの良さにも貢献する。また雨水を浄化し、地下水を涵養する。

今日は工程会議に参加するのが矢野さんの目的だった。私も末席に座らせてもらい傍観した。ご住職の奥様がパンを差し入れてくれ、皆でベンチに座って頂く。食後、タクシーで三春駅へ。磐越東線と新幹線を乗り継いで仙台へ。矢野さんは車内で略図のようなものを描き始めたが、途中でペンを握ったまま居眠りを始めてしまった。


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