新居に越してきてそろそろ丸3年。今日まで5本の鰹節を削った。鰹節を使い始めたのは20代の後半の頃。山暮らし時代も削っていたから、通算ではもう何本使っているかな(笑)。ここまでチビりながら削っても、指に怪我をしたことは一度もない。つまり、この削り方はきわめて合理的ということである。
手に持っているのが古い鰹節。もう削れないので新しい鰹節をおろす。
先日「丸一」で買った鰹節である。鹿児島は枕崎産の本枯れ節。高松に来る前に使い続けていたアメ横の「伊勢音商店」のもの枕崎産だったが、それと寸分違わぬ上質のものである。こちらは皮面。
裏側。一匹のカツオから4本の鰹節が作られるが、これは背のほう。雄節と呼ばれる。
削り始めは裏面の頭側から。
今使っている昆布は利尻昆布。やはり、日高よりずっといい出汁が出る。そして出汁がらは、そのままむしゃむしゃ食べても美味しい。日高のように昆布臭くないのだ。
水から弱火でゆっくり煮出した昆布を沸騰直前に引き上げ、削りたての鰹節を入れる。
アクを取りながら弱火で4〜5分。漉したものがあらゆる和食のベースとなる合わせ出汁である。
その出汁で白味噌雑煮を作る。
餅は炭火で焼いた。白味噌と合わせ出汁、そしてその焼き餅の美味しさにあらためて感嘆したのだが、さらに驚かされたのはそのあと炭火で焼いたシシャモの旨さだった。昨日ガスレンジで焼いたものと、あまりにも違うのである。
あらためて炭火の凄さを思い知ったのだが、考えてみれば鰹節の生成にも薪が使われている。燠炭と燻しによって長い時間をかけ、カツオの身の水分を抜くのだ。その後、カビを付けることで「本枯れ節」と呼ばれる鰹節になる。
白味噌の原料、麹菌もカビの一種である。この麹菌=アスペルギルス・オリゼーは味噌、醤油、酒などあらゆる和食調味料の原材料として欠かせないが、麹菌を使うのは世界で日本だけである。
カビを用いた発酵食品は東アジア・東南アジアにも多数あるが、他国ではこの麹菌はできないのだ。それくらい日本の気候風土に適しているカビなのである。そして、カビ付けした本物の鰹節も日本でしかできない。
鰹節と麹菌を思うとき、私は日本の森と水が脳裏に浮かぶ。
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された。でも現実には米離れでパン食が多くなっている。日本における製パン業は原材料から添加物、油脂、まで問題だらけで、学校給食から考えても日本の食文化を破壊する元凶といえる。え?パンてそんなに酷いの?・・・ってヒトはこれ読んでみな。
鰹節を削り始めたきっかけは、娘が生まれて初めて父親になるときだった。
でも私、パンも大好きなんだよなぁ(笑)。