車中泊した「道の駅 おおさと」から夜明け前に車を出発させた。下道と三陸自動車道を使ってまず石巻まで行ってみる。下道は、脇道に入れば補修跡が多くてガタガタとする。三陸自動車道は鳴瀬奥松島~志津川と先の部分開通区間が無料となっており、明け方から大型トラックが行き交う。
石巻の商店街に石ノ森章太郎のイラストや人形キャラがたくさん飾られている。海に出ると「石ノ森萬画館」が見えた。石ノ森の原案をもとに「宇宙船」をイメージして作られたこの建物は、震災で大被害を受けたが、2012年の11月に営業を再開している。
南三陸町までは仮設住宅や雑草の生えた田んぼをいくつか見ながら5:30過ぎに着いた。国道に「ここから 過去の津波浸水区間」という標識が上がっている。その先に進むと明らかに被害跡とわかる工事区間が次々と現れる。
南三陸さんさん商店街は仮設店舗で営業していたものが、今年3月かつての町の中心部に新しくオープンした。設計者の隈研吾は4年ほど前から南三陸町のグランドデザインに関わっており「東北復興のシンボルとして世界に発信できるよう」あるべき町の姿を考えながら取り組んでいるという。
この時間、さすがに人影はない。駐車場に車を止めて撮影させてもらった。地元のスギをふんだんに使った木造の平屋が6棟建っている。
コンビニのミニストップも入っているようだ。
下屋の軒下を長くとっている。
たわみを押さえるために梁を2本とって千鳥に柱を立てている。
そのつなぎ目もユニークだ。
施工は木材流通をルーツとするナイス㈱グループ(本社、神奈川県)が手掛け、オリジナルの金物接合による軸組工法「パワービルド工法」が用いられている。プレカット加工された柱と梁に接合金物をはめ込み、ドリフトピンで固定する工法で、省施工でありながら耐震性と精度を保ち、かつ短工期で施工できる。 各棟の躯体建て方工事は約10日で完成したという。
ここでも隈研吾お得意の格子(ルーバー)処理が。細心の配慮が見えるスギとアルミのルーバーの使い分け。サイズやピッチが微妙にちがう。
広場の中央にあるオープン形の「さんさんコート」。各店舗で購入したものをここに持ち寄ってここで食べるということなのだろう。
ばた角の端材利用なのか? ユニークなテーブルが・・・。
隈研吾がつくるとこんなバラック的な建築も美しい。軒の出や屋根の角度、柱の間隔など、均整がとれているのだ。
なんだか「桂離宮」を連想してしまった。各棟は海が開放的に大きく感じられるように、メインストリートに沿って少しづつ角度を変え、配置されている。
中に写真展示館があり、震災を取り続けた写真家、佐藤信一氏の写真が展示してある。
南三陸の津波前と震災後、東北でも最も壊滅的な被害を受けた町にひとつ。実際、この新たな商店街の周りには、まだ他の建物はほとんど見られず町の多くの人々が今も仮設住宅に住んでいる。
帰りに陽が昇った海を撮影してみる。奥に見えるのは震災時に女将が多くの住民を救ったことで話題になった「南三陸ホテル観洋」。同ホテルでは毎朝「語り部バス」を運行している。「どこに何があったのか案内してほしい」という宿泊客の要望に応えたのが始まり。12年2月から開始し、3年間で約6万2000人がバスツアーに参加したという。
さて、仙台から米沢へ。今日は北陸金沢まで走る。