本楽寺と石庭


剣山周辺の風土が好きでよく徳島を訪れるのだが、吉野川沿いを走っていると高台に気になる石垣がいくつも現れる。この一帯は中央構造線の南側に当たり、青石(緑泥片岩/三波川変成岩類)を産する。この石を使った石垣はとにかく色が美しく、片理で割れた長石が組み込まれて素晴らしい。中でもちょうど脇町の対岸当たりに気になる大きな石垣がある。

先日、貞光の奥の「そばごや」に蕎麦を食べに行った帰り、またその石垣に目が止まった。上の奥に建物が見え、どうやらお寺のようなのであるが、ここは道脇に車を止めれるような場所がない。カーナビの地図を撮影しておき、アトリエに戻ってから調べてみると「本楽寺」というお寺でホームページがあった。

これがなんと枯山水の石庭や茶室を持っており、有料(300円)で拝観できるのだ。また、予約すれば精進料理がいただけるという。というわけで連休中のどこかで行ってみようと計画していたのである。まずyuiさんのお墓にお参りして、讃岐山脈を越え吉野川へと降りた。

ところが国道からはJRの徳島線がまたがっていきなり高台になっており、入り口が解らない。かなり遠回りしてきわどい細道を辿り、なんとか寺に接近したももの、駐車場らしきものが見当たらない。そこで電話してようやくお寺の入り口へ。

門をくぐるとすぐ右に鐘楼があり石庭がひろがる。

左手の建物から石庭を眺める。蔀戸(しとみど)が珍しいが、それが効果的に風景を切り取る。

借景が吉野川。石はもちろんこの一帯で採れる青石。右は鶴、左は亀を現す「鶴亀の庭」だ。作庭は重森三玲に師事したという斎藤忠一氏。

それほど古い作ではなく完成公開されてまだ4年ほどだという。以前から石庭はありそのときは吉野川側には塀があったのだそうだ。それを撤去し、石はまったく新たに配置しなおした。奥の阿弥陀堂に上がるとその塀の名残りが見える。

建物を通して石庭の反対側に、ガラス戸越しにぎょっとするような大岩が陽に照らされていた。

なんだこれは? まるで巨大な龍のような・・・。

近づいてみると自然の岩盤だった。

岩の上に真新しい茶室が建てられている。

住職が前客の案内を終えて僕らのほうにやってきた。寺と石庭の経緯などを解説してくれた。これが改装前の旧石庭の写真だそうである。

青石は雨に濡れたときが最も美しい。というので住職がホースで水をかけてくれるというサービスも!

阿弥陀堂は京都の仁和寺を模したものという。総ヒバ造り、屋根は銅板葺きである。基礎の石組みがまたすばらしい。束立ての礎石も青石である。

裏に回るとこれが清水寺のような懸崖(けんがい) 造りになっているのだ。将来はこちら側にも回廊をまわす予定だそうだ。

石庭を眺めた建物は寄せ棟造りで、奈良の寺を彷彿させる鴟尾(しび)が乗っている。石庭側の蔀戸に対する岩盤側はガラス戸になっていて、こちら側の岩盤とそれに続くモミジの庭園が見渡せる。

その回遊式庭園。こちらも斎藤忠一氏による作庭。

小さな滝はもともと自然のもので、これをドラマチックに見せるように作り込まれている。

住職の案内で茶室に向かう。

にじり口。

中は四畳半。素材はすべてが上質な本物。

隣に10畳茶室があり、こちらでお茶(有料500円)をいただいた。

私の茶碗には鎧兜の絵付け。

茶菓子は地元産の干し柿だった。

書院側から回廊庭園の緑が、正面のガラス戸越しに銅葺きの屋根と漆喰の壁が見える。障子の格子パターンに切り取られ、まるで抽象絵画をみているようだ。

岩角に一株の石南花が咲く。モミジの新緑といい、絶好の季節に拝観できてよかった。

また秋に来よう。モミジの紅葉を愛でながら精進料理をいただきに・・・。

本楽寺HP


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