ライオン通り「Duomo」大しじみのパスタ


高松のライオン通りアーケード内にある「Duomo」。すぐ近くにシティホテルや三越デパートがあるという中心街のアーケードに突如出現した、薪窯を有するイタリアレストランである。評判は聞いていたが、店の雰囲気、味、接客ともすばらしいものだった。とくに薪窯ピザはここが高松一に躍り出たのではないだろうか。

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夕刻、早い時間に訪れた。まず前菜のクオリティに感心した。ライスコロッケ、タイのカルパッチョ、イタリアンサラミ、サトイモや根菜の煮たもの、ナスのラザニア、岩のり入りの揚げ物、干しぶどう入りのニンジンのサラダ・・・などなど、値段からして良心的で、ただのお飾り的な感じは微塵もない。

アンチョビ使ったピザを皆でとりわけて食べたが、生地もいいがチーズやオイルもいいのだろう。とにかく渾然としたその味は一瞬忘我するほどだった。普通の一夜ならこの前菜とビール、ピザ1枚にグラスワインで十分満足することができるだろう。

が、昨夜は多人数の会食にお呼ばれしたので、いろいろと一品料理を食べれる機会を得た。マッシュポテトにチーズを忍ばせたオーブン焼き、それに合わせ白ワイン。牛ほほ肉の煮物、これにパルミジャーノ入りのリゾットがからませてある一品もすばらしかった。これは赤がピタリ。

グラスワインは600円から850円以内の範囲で複数用意されている。メニューに詳しい解説があるのでそれを読みながらじっくり選ぶのも楽しい。たかがグラスワインでなく、料理と組み合わせて楽しむ一杯をおざなりにしない姿勢が良い。

さて、パスタも一品試してみようと皆でメニューをめくった上、貝のカルボナーラを頼んだのだが、アサツキの緑に彩られた中にアサリと大きな黒い二枚貝がいる(ムール貝ではありませんぞ)。これはもしや・・・。

ギャルソン(イタリアではカメリエーレと言うそうだが)に訊くと、やはり「大しじみ」とのことだった。手に入るものは国産にこだわっているのだそうだ。クリームの中に小さな巻貝肉(おそらく瀬戸内のニシガイ)の切り身が仕込まれているのも見逃せない。

これまで私は何度も書いてきた。瀬戸内魚介を使ったイタリアンができないだろうか、と。高松はかつて「タカチョン族」と呼ばれる全国支店の社用族が集結するいわば接待文化の町だった。その後、うどんブームを経て見てくれ重視のうんちく好きな「タカマツ・スノッブ」が闊歩する時代が長く続く。

が、アーケード再生の成功と、セトゲーや311震災移住の人々との全国レベルの交流によって、ようやく町が、店が、成熟してきたのだろうか。その淘汰のスピードは驚くべきもので、今後はスノッブに支えられて細々と生き残る店と、本物の味と接客を追求する店とに二極化していくのかもしれない。

自家菜園を持ち、基本調味料を吟味して、始終よい食材を探し、毎日しっかり自炊暮らししている私だが(だからこそ支払う価値のある店が瞬時に解ってしまうのだが)、外食や外飲みできらりと光る店を発見するのは嬉しいものである。

内輪だけで完結する小料理屋ではなく、誰にも門戸が開かれている価値ある店であってほしい。またそんな店に足を運んで支えたいとも思う。高給取りや社用族だけでは飲食文化は育たない。

普段は自分から甘いものなど注文しない私も、昨夜はさすがにテラミスとエスプレッソで終えてみたくなった。店を出ると傍らにピザ窯用の薪が飾られていた。海と山につながっているその感じがとてもよかった。

ぐるなび

食べログ


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