花園~西の内和紙~益子


民宿は磯原の景勝「天妃山」のところにある一泊二食で6500円という激安宿だけに建物や調度品は期待すべくもないが、料理にはちょいと海モノのいいのが出て、しかもお風呂は温泉だ。早朝、天妃山の上から太平洋に昇る朝日を拝んで大北川河口の釣り人を観察する。

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ルアーを投げている人もいるのでスズキかな? と思ったら、訊いてみるとなんとサケ狙いであるという。サケは全国どこでも漁協が厳重管理していて、川で釣ると「密漁」になるはずなんだけど、河口だから許されるのか? と思ったら、対岸で浮子+タコベイトというけったいな仕掛けで釣りしていたおっちゃんの竿に60cmくらいのサケがかかる。と、岸までその魚を引き上げたおっちゃんはそのサケをリリースしてしまった。

ようするにキャッチ・アンド・リリースでサケの引きだけを楽しんでいるのか、はたまたメスの卵狙いでオスはリリースしてしまうのか? (おそらく後者だとは思うが)不明のまま朝食へ。食べ終えてまた岸壁を見ると釣り人は誰もいなくなった。潮時が悪くなったのかもしれない。

今日は僕の創作の原点ともいえる昆虫採集と釣りの思い出のつまった故郷の山河「花園山」周辺を相方にみてもらおうと計画していた。あれからおよそ30年。当時の原生林の名残りはほとんど伐られてしまい、人工林になっている。あるいは切り株から「ひこばえ」が細いままたくさん立ち上がった、ボサ山がそのまま成長したかのような広葉樹林に戻っている。

この山を、人工林は強度間伐し、広葉樹のひこばえは数本に伐りそろえれば、非常にいい山に復活していくと思う。もし僕が水戸に住んでいたらNPO「花園山昆虫の森・復活プロジェクト」でも立ち上げたいところだ。山の神を参拝し、小川集落の奥にある「小川学術参考保護林」に向かった。

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ここは昭和51年から県の営林署がわずかな広さを保護管理している。ちょうど僕が昆虫採集止めてしまった17歳のときから、そのまま保存されているという貴重な場所である。東北や中部山岳に行けばブナ・ミズナラの原生林はないわけではない。が、ここが貴重なのはそれらよりも標高が低く照葉樹林との分布上の接線に近い場所だからである。

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全国的にみると、このような場所は里山として伐られ2次林として活用されている場所がほとんどで、残っていたとしても社寺林程度の広さしかない。天皇や幕府の直轄地として厳重な管理がなされなければ、まず里に近い山で原生林が残ることは考えられないのだ。それぐらい、日本人は太古の昔から、徹底的に森の資源を有効利用していた。しかし、花園には昭和の初期まで、広範囲に原生林が残っていたという。

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ここにはいま希少種になってしまったクロシジミや、チャマダラセセリなどが生息しており、全国の虫オタクたちからも注目を集めている。

カーナビをセットして矢祭山へ抜け、大子の「麻呂宇土」でチーズケーキやシュークリームを食べ、山方宿の「紙のさと」へ。茨城県無形文化財指定の「西の内和紙」の展示販売店である。以前ここで漉き損じの和紙を大量にいただいて、04年の水戸の個展で魚やトンボを描いたのは以前のHPに書いた通りだが、今回のななくさの個展でその魚シリーズを手放す(販売する)ことにしたので、個展案内をお渡しに行った。障子紙と和紙のはたきを買った。純コウゾ100パーセント、強靭で美しい和紙である。とくに未晒(みさらし)のきなり色と質感はすばらしい。大判の本物の和紙を廉価で入手できる場所は貴重な存在である。

ふたたびカーナビをセットして益子へ。どの山越えの道も完璧に舗装路になっていて、小さく軽量のコペンはそこをすいすい走っていく。これまで車で旅をしていて、道路地図で道を探すストレスは大きかった。また運転上も危険であったが、カーナビはこれを解消してくれた。高い買い物だったが、これからまた旅が増えるであろう僕らにはコペン+カーナビは強力な友になりそうだ。

一昨日見損なった「益子参考館」で濱田庄司の陶器やコレクションを見る。移築した母屋は茅葺きの大型のもので、保存状態も非常に良い。土間では広葉樹の薪の囲炉裏がけぶっていて、土間とかつての馬屋は喫茶室になっている。そこに置いてある調度品がまたすばらしい。贅をつくしているわけではなく、濱田庄司が民芸運動の中で見つけた庶民感覚のテーブルやイスたちだ。かたわらに濱田作の笠間焼の火鉢が、囲いもなく置かれている。西洋と東洋が生活文化の手触りから合体した、渋くて美しい見事なデザインだった。

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益子の陶器市は休日でごった返していたが、人をかきわけながらコーヒーカップを何個か買う。古民家の中で藍染めを続けている所も見てきた。帰りに宇都宮に寄って名物の餃子を専門店で食べてみたが、わりと旨かったけどアトリエの手作り餃子のほうがだんぜん旨いと思った。安くて種類が豊富、ってことで有名なのかな? 1件だけなのでよくわからない。また調査してみよう。夜10時頃、アトリエに帰還。今回もよく走った。留守中に個展に来てくれた友人からお土産が届いている。メールもいただいた。ありがとうございました。

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