イラストマップ仕事中


連日、茨城南部のイラストマップと格闘中である。南部は初めてなので全体像を把握するまで時間を食ってしまった。元図には観光マップとか本屋で売っている折りたたみの1枚地図なんかも参考にするけど、なんといっても一番なのは国土地理院の1:25,000地図と1:200,000図である。前者は登山などには必携の地図でおなじみの人も多いだろう。後者はかなり大きなスケールの6色刷りのものである。この地図が有用なのはこのスケールでありながらおおまかな土地区分(田、畑、山林等)が記号化されていること、また河川の位置が明解であること。環境に取り組む僕にとって、鳥瞰的に全体を把握するのには大切なマップなのだ。

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思えば僕は、フリーになりたての頃からよく地図の仕事が来ていた。飲食本関係のマップをやったこともある。営業なんかしていないのに、地図の仕事がとぎれることなく入ってくるのだ。最初は一種のバイト感覚でやっていたのだが、だんだんとイラストマップ系の仕事が舞い込むようになり、独自のスタイルをつくって現在に至っている。

僕のイラストマップの特徴はというと、まず地図を1枚の絵画と見立てて全体を構成してしまうことだろうか(「あなたの地図はマンダラのようですね」と言われることがある。かといって、地図の制約や範疇から逸脱するわけではない)。

それに河川や山など自然の地形を重視すること。土地の歴史や自然を盛り込んで、圧縮したコピーをつけて地図と一体化させること。文字がほとんど手書であることも特徴だ。現地にはかならず出かける。よほどの事情がないかぎり、どんな遠方でも実際に現地に足を運んで取材をする。その土地の空気や会話から、観光ガイドから漏れていながら出たがっているものを感知することもある。

もちろん動植物の知識や、土地を読む感を働かせる。そして小さな植物のカットひとつ描くのに、牧野植物図鑑を引っ張り出すこともしばしばだ。こんな風だから1枚のイラストマップを仕上げるのに人の何倍も手間がかかる。

地図を描くには絵画やデザイン力だけでなく、ある種の知性が必用だ。僕はむかし仕事で図面をひいていたこともあり、また昆虫採集の山旅のために小中学の頃から国土地理院の地図に親しんでおり(あの頃はまだ1色刷りであった)地図そのものが好きな少年だった。

また海外の地図も気になる。イギリスに旅したときは大英博物館で古地図に釘付けになったし、自然史博物館で美しい地質図を見つけて買い込んだりした。ミシュランの1:10,000の地図を片手にパリ市内を歩き回ったこともある。あれも美しい地図だった。

初対面の人に「絵はどんな仕事をされているんですか?」と聞かれて「イラストマップなんかもやってます」というと、なんだかバカにしたような顔をされることがある。イラストマップというと、芸術的には一段低い仕事のように見られているようなのだ。

しかし、僕のこの仕事がメジャーな場に躍り出たとき、案外大きな社会的影響を与えるかもしれない、と最近ひそかに思い始めている。


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