コマクサと草津温泉


今年は四国取材で時間を使ってしまい、畑や敷地の手入れが遅れているので尾瀬キャンプへ行けそうにない。日帰りで草津白根山へコマクサを見に行くことにする。日本有数のコマクサ群落地であるらしい。帰りはもちろん草津温泉で汗を流すのだ~。

草津の温泉街を抜けて登山口のレストハウス駐車場へ向かう道は、すでに硫黄の臭いがして「危険のため駐停車禁止」の立て札がある。そんなわけで高い樹木がないので、なんとも日本離れしたダイナミックな風景の中を、コペンを走らせていく。途中からオープン走行を楽しむ(コペンはボタンひとつで屋根がトランクに格納され、運転座席に座ったままオープンカーに変身するのである)。

駐車場から登山靴に履き替え、いちおう傘を持って出発する。弓池にはワタスゲの群落、途中でクジャクチョウやミヤマモンキチョウに出会う。後者は和製ブルーベリー「アサマブドウ」を植樹とする高山蝶だ。リフトで時間を稼いでコマクサ群落のガレ場へ一気に登る。ところで駐車場は400円、リフトは350円となかなか良心的な値段だ。

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オオシラビソやコメツガ、ダケカンバなどの、亜高山帯の樹林の独特な針葉樹の香りを楽しみながら登っていく。イワカガミは終わってしまったが、ゴゼンタチバナやコケモモの花が登山道の足元に咲いている。ミネヤナギも白い綿毛をまとっている。それにしてもササに覆われたところ以外は、林床は非常に豊かな感じを受ける。

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亜高山帯は冬の雪と強風で高木は育たない。中層の樹木も里山とはまったく種類がちがう。ここでの主役はナナカマドやヤナギの類である。その下にはササか、あるいは倒木が厚いコケで覆われ、そこに亜高山の美しい植物が根を下ろしている。あたかも里山を草刈りで手入れし続けた後に出現する光景とでも言ったらいいか。それは京都の古寺の庭園のようにも見える。

不意に視界が開け、コマクサの大群落が現れた。第一印象は「赤いな!」だった。花の赤色が一様に強いのだ。ガレ場の石もまた茶褐色で、北アルプスで見ていた白い砂礫にピンクのコマクサと印象がちがう。が、それにしてもその群落の大きさは見事だった。盗掘でずいぶん減ったものを地元の有志たちが保護して増やしていったそうだ。よく観察すると、ふつうのピンクの花もちらほらとある。

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黒雲が動き始め、雨が落ちてきたので、ピークを踏んだあと同じ道を急いで戻ることにする。今日は平日、ここにもジジババ様がいっぱいだ。しかしこんなところで雷雨に遭ったら、気温が急に下がってかなり危険なことになるのだが、皆一様に軽装で平然として奥の方に歩いていくのだ。時間すでに午後2時過ぎ。中高年登山の遭難が後を絶たないのがよくわかるのであった。

草津は日本有数の温泉地のひとつだ。湯治場としての歴史も古く、無料で入れる外湯(共同浴場)が町内に18カ所もある。湯量とその質も日本最大と言っていいだろう。草津温泉の外湯愛好家の間にファンが多いという滝下区の共同浴場「煮川の湯」へ行ってみた。。源泉はここだけの煮川源泉で熱めのお湯ということだが、なんと49度。ぬる風呂好きの僕にはちょっと無理な熱さである。

お客さんたちも、狭い板の間の洗い場であぐらをかいて、意を決しては入り、また出て休む、というのを繰り返している。いちおう入ってみたが、とても湯を楽しめる温度じゃない。しかも草津はpH2の強酸性。昔から、病をかかえて生きるか死ぬかで草津参りをした人も多かったという。そんな草津の歴史を彷彿させる外湯だった。

相方が真っ赤な顔で路上で待っていた。女湯も同じだったらしい。「それにしても・・・」「さすが草津、これが草津」。というわけで「もう1軒、行く?」「行く行く!」。昭和区の住宅街にある「睦乃湯」へ。地元のお年寄りが先客だった。どう見ても観光客風情の僕は、軽く会釈をかわして端のほうで服を脱ぐ。ここも熱いが、煮川ほどではなく、なんとか耐えられる。源泉は「湯畑」。ここも湯口を含んでみると酸っぱい。

帰りの車の中で、温泉につかった後特有のふわふわ感の他に、足の裏がじんじんといつまでも冷めない。しかし、コマクサと草津だけでもたいした組み合わせの旅だ。明日はジャガイモ掘るぞ!

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