一斉清掃の集まりで集会所に行く。集会所はかつての分校跡だが、群馬県が子供たちとのイベントで使っている関係もあって、草刈りや補修、掃除などが定期的に行なわれている。相方はカメラマン役だ。
僕は石垣補修のほうを手伝いに行った。一人住まいのおばあさん宅の石垣が崩れているというので、そのご近所のTさんらと一緒に沢筋の林道に入る。下の畑の土が流れて根石が浮いてしまい、それで崩れた様子だった。
一つは間伐材の桟道を渡して応急処置をすることになり、伐採から始まって、土を削って4本の材を渡した後、かすがいで止め土をかぶせる。
もう一つは3~4段程度の小さな石垣で、これはTさんが皆に石を集めさせると、ささっと組み直してしまった。
崩れた石垣を組み直すとなぜか石が足りなくなる。崩壊した石を同じ数だけ拾うのだから、そんなはずはないと思うのだが。ところが新たに組み直すと、はめ込む形にいい石を選びながら順に積んでいくので、前と同じツラで石を使えない。そして前よりも緊密に石が組まれていくので、高さが足りなくなる。根石が浮いている場合は、そこから深く設置しなおさねばならない。ハンマーで叩いて石の形を変えたり(小さくなる)もする。さらには裏込め石が足りなくて、そこに割った石を入れたりする。そんなわけでより多くの石が必要になってくるのだ。
今回は根石(基部の石)の重要性をまざまざと感じた。始終草取りしている傾斜畑では、どうしても土が流れやすい。基部の石は地中に深く刺さっているものだが、その根石が、畑の土が流れることで露出してくる。そして動くと、石組が崩れる原因をつくる。以前、大家さんの昔話しの中で「子供の頃、畑の土を下に落とそうものならこっぴどく叱られたものだ」と言っていたのを思い出す。
斜面のある場所での土の動きは植物の根が防いでくれる。また、植物は自ら枯れることで腐葉土をつくる。が、石垣に接する樹木は根を張りすぎて石垣を動かしてしまうことがある。もし石垣の天端などに大きく育った木が枯れた場合、根が腐ることで収縮し、石垣を崩すことがある。
ただし、地中に埋め込んだ丸太などは、案外強いものである。昔の土木工事では、基礎工事に「松丸太」がよく使われていた。表土の削られた土中では、穿孔性の昆虫や菌類など、木を分解するものが入り込む余地がないからだろう。こう考えると、水中で木を保存する知恵も納得できるのである。