石垣積み


というわけで朝から石垣積みの手伝いをする。

この石垣は10年くらい前に積んだもので、石は沢の近くから運んだものが多いそうだ。沢の石は水に揉まれているので、山から直接掘り出したものより角がとれて丈夫だという。

イタルさんがキャタピラのついた小型運搬車に石垣積みの道具を載せて移動。その中身はツルハシ、ハンマー、鉄棒、木杭、ジョレン、ナタ、水糸、など。まずは崩れた石を両側に除ける。作業しやすくするためである。

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そしてツルハシを使って崩れた部分の土をさらに掻い出す。崩れるといっても、もちろん一番下の石まで全部崩れているわけではないのだ。根石と呼ばれる一番下段の石は地面に30cmほど埋もれており、これが石垣の基礎となる最も重要な石なのだが、それはもちろん動いておらず、その上に2~3段はまだ石が載ったままだ。

その最下段の石があらわになるように、丁寧に土をかき出していく。そしていよいよ積み始める。石は、石垣面に対して直角に、長手方向に置いていく。石の置き方はかなり慎重である。方向を何度も取っ替え引っ替えし、他の石との接触部分や、角度をみる。載せた石がの手前側が下向きではダメで、僕が手伝って載せた石をみて「ここの角度が向こうに下がらなけりゃダメなんだ」とイタルさんに修正させられた。石と土の間のすき間には小石と土を入れて石を固定していく。

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下の石はとくに大きめのものを選ぶ。大型で長く突き刺さる石は「ああ、こりゃいい石だ」とイタルさんは要所にはめ込んでいくのである。難しいのは既存の積み始めの石が下さがりのときの追っ付け方。そして両サイドの既存石垣との接点部部分である。崩れ残った両端部分は、いつ崩れてもおかしくないままかろうじて石がへばりついている感じだ。そこに下から石を接触させながら積み上げていくわけだ。

積んだ石はハンマーで叩いて奥に押し込んだり、出っ張りすぎたものはハンマーで叩いて詰めてしまうこともある。

2~3段積むと、土と石との間にやや大きなすき間ができてくる。そこ小石(大はこぶしくらい)をあてがって、石を固定していくわけだが、これは「裏込め石」と呼ばれる重要な細工である。石を固定するとともに、水はけをよくするのである。この地方ではこの石を「ごず」と呼んでいるようだ。この裏込め石は、石垣積みが高くなればなるほど多く必要になってくる。崩れた土は斜めに倒れているが、石垣は垂直に近く積みたいわけだから、上に行くほどすき間は大きくなっていく。

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今回の石垣崩壊はこの裏込め石が少ないのが原因だったので、石が足りなくなってきた。そこで別の場所からコンクリートのガラを運搬車で運んだ。ようするにコンクリート構造物を壊した後の残骸である。それが放置してあった場所があったので、そこから持ってきたのである。それを裏込めのすき間に放り込んでいく。なるべく空間ができないように、つき固めていく。

上段まで積み上がると、石垣に鉄棒を刺し、そこに水糸をかけて天端の高さをみる。イタルさんは積んでいる石の上に立ち、僕が下から石を上げて手渡す。石の選び方は最後まで慎重である。そしてハンマーで石を叩いていて土壁側に石を押し込んでいく。この作業で石垣が締まる。実際、積んだ石の中で1cmくらいは動くものがある。

天端の石が並んだところで、下に落ちた泥土を箕に入れて、上に放り上げる。これが大変な作業だった。粘土質の土なので水を吸って重い。全部片付くまでに汗だくになってしまった。僕が放り上げた土を、イタルさんがスコップで均し、足で踏みつけていく。これは後日、やや沈んでいくだろうとのこと。そこでまた土や小石をこのへこみに補給するのである。

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昼にちょうど補修が終わった。石垣積みの要領は大きく3つ。

1)「根石」は念入りに、動かない大きな石を地中に30cm以上刺す。畑などの場合は土が流れやすい分、さらに深く。根石が動いたらどんな精巧な石垣でも崩れる。

2)積み石は、下段ほど大きく深いものを使う。とにかく「積み角度」が重要。石の角を立てる。下向きはダメ。上に積んだ石がずり落ちるから。

3)石の裏に小石(ごず、裏込め石)を入れる。積み石の裏が土だと、雨で土が流れたとき石が動く。それが崩れる原因になる。積み直しの場合はあらかじめ小石を多めに用意する必要がある。

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それにしても、自然石の石垣は美しく、迫力があり、そして暖かい。石垣のすき間には植物が生え、昆虫や小動物のすみかをつくる。石垣バンザイ! 今日は本当にいい勉強をさせてもらった。


コメント

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