午後からもう一軒の農家さんにおじゃました。那須連山からの湧水が豊富なところで、田んぼの水には湧水や地下水を使っている。稲刈り後9月には水を入れてしまうという田んぼ。オーナーのMさんが長靴でジャバジャバと水田に入っていく。もぐらない。遮水の地盤はしっかりしている様子。
ところが、泥の上層はトロトロになっている。イトミミズなどの水性生物の糞でつられた部分で、舐めると乳酸の味がするそうだ。この層は無酸素(還元)状態で、雑草のタネの発芽を抑える効果があるという。
Mさんも田んぼに隣接し、小さなビオトープをつくっている。そこに仕掛けたモンドリにドジョウや小魚、タニシなどがわさわさと入っている。
ビオトープにはマコモが植わっていた。食用にもなり、ハーブのようなよい匂いもする大きな水性植物。これは刈った後の状態。
土質は黒ボクと火山灰土で畦の水漏れはおきにくい。この土質の稲の食味は良くないと言われているが、現在はとても美味しい米ができるようになったとのこと。
H先生が土のサンンプルを採る。無農薬田んぼの場合、このひとさじの中に100万個体もの微生物が存在するという。一方、農薬田んぼの場合は1000から数百という。
貝化石の粉末と、麦茶粕・米ぬか・籾殻を醗酵させた液肥、などを肥料として田んぼに入れている。
米ぬかをなめさせてもらった。甘く、香ばしく、嫌な苦みや癖がまったく無い。「これが無農薬の米の糠の味なのですよ」とMさん。
見学の後はニンジンやヤーコンのゼリーやジュース、その搾りかすのドーナッツ、自家製タクアンなどをいただきご満悦。
湧水というのは一見恵まれた環境のように思えるが、山から流れてきた河川水よりは貧栄養なわけだから、ミネラルなどの補完が重要なのだろう。昔は囲炉裏やカマドの灰が大量に投入され、灰ミネラルが活躍していたのではないだろうか。
今、肥料は稲が直接吸うのではなくて、微生物の副産物を稲が吸収する、ととらえられているようだ。水に溶けたかたちの窒素やリンはミジンコなどは取り込めない。さらに底辺にいる原生生物らが吸収する。
田んぼの資源循環はそこからスタートするので、原生生物の底辺が大きければ大きいほど、生物層は豊かになり厚みをまし量的にも多くなる。その微生物を活性化するためにミネラルが要る。微量元素と生命活動の関係が解り始めてきたのは、ごく最近のことである。
田んぼを乾燥させたら、魚は水路やビオトープに避難できるが、微生物は移動できない。水中の微生物はどうなるのだろうか? 彼らは休眠卵という戦略でこの期間をやりすごす。ある程度の期間なら乾燥に耐える。そして水が来ると再び湧いてくる。
もちろん、渇水の期間は短いほうが有利なのである。とすれば、ふゆみずたんぼを何年も続けた場合、微生物はさらに増えていくのではないか? これはまだ、データがとられていないそうだ。