栃木へ農業関係の取材へ行った。
冬に水をはる「ふゆみずたんぼ」の実践農家さん。田んぼのわきにはビオトープ(池)がつくられている。
微生物の研究者H先生が小型柄杓を取り出した。
すくったのは・・・ミジンコ。
正確にはヤマトヒゲナガミジンコ。卵塊を持っている。
ここは事情あって水がはれないところ。コンクリート水路と田んぼとの間に「小規模魚道」が設置されている。
水があると、ここを魚が上ってくるのだ。無農薬の田んぼの水は温かく栄養分に富むので、魚にはそれがわかるらしい。
農園のオーナー夫妻が自ら手打ち蕎麦をふるまってくださる。
鴨南蛮でいただいた。
新潟でもそうだったが、田んぼの向こうにスギやヒノキと雑木林がモザイク状になった低山が見えている。自然農の田んぼと寄り添う低山、という関係は里山生物の宝庫をつくる。山だけでなく水があることで生き物は飛躍的に増え、より豊で複雑な系をつくる。
ホタルやタガメ、トンボなど水と陸を両方使う昆虫類、カエルやサンショウウオといった両生類、そして魚介類とそれを食べる鳥たち。
田んぼは生き物にとって湖沼と同じようなものであるが、浅いこと(水温が高くなる)、稲があること(隠れ家をつくる)などで小さな生き物をたくさん住まわせる機能を持っているのだ。
ところが、稲刈りのときは水を抜いてしまうので、田んぼの水に依存する生き物たちは一時的に水路へ避難しなければならない。基盤整備された田んぼと水路ではそのつなぎが遮断されているのだ。コンクリート枡や水門等によって。
田んぼのわきに周年水があるビオトープがあると、ここが干渉地帯となって生き物の待避所ができる。そして秋・冬に田んぼに水をはってやれば生き物はそこにまた帰ることができる。
これじゃ生き物のために田んぼをやっているみたいだが、実はこの生き物と寄り添うことこそが、無農薬の栽培を成功させる重要な鍵なのである。