囲炉裏導入と同じくらいインパクトを与えてくれた薪風呂釜。すっかりお気に入りのその釜は製造元が埼玉県の川口市だった。川口といえば鋳物の町で、古典的名作映画、吉永小百合主演の『キューポラのある街』の舞台になったところだ。
いつか行ってみようと思っていたのは、鋳物カマド「ちびカマ君」の二代目を欲しいと思っていたからだ。廃棄されようとしていた中古品を貰い受け、使い続けているものの、さすがにあと数年? の寿命が見えてきた。スペアが欲しい。鋳物の町、川口の金物屋を探せばひょっとして新品が売っているかも? と淡い期待を抱いて行ってみた。
市内へ入ると小さな工場がたくさんあって鋳物を扱っている様子。期待が高まる。まずは市役所へ。そこでカマド探しの旨を伝えると商工課を案内してくれた。紹介されたのは川口駅前の金物屋さん。で、あったことはあったのだけど、サイズがでかい。
「んー、たぶんお探しのは3号か4号だと思うんですが、もう製造してないですね」
置いてあるのは5号なのだ。このサイズならジョイフル本田にもあるし、川越の金物屋でも見た。なぜ5号だけがあるかというと・・・
「保育園とか小学校の行事で餅つきがあるでしょう、あれで羽釜で餅米を蒸(ふ)かすのにこのサイズがちょうどいいんですよ」
で人気があり、これだけが作り続けられている、と。でも、日常の炊事に使うにはこれでは大きすぎるのだ。チビカマはおそらく3号。鋳物カマドでは最も小さなサイズなのだ。
「いま、煙出して火を燃やすのはとてもやりにくいご時世になっちゃいまして・・・」
話好きの若旦那は、カマドや薪釜が使いにくくなった世の中を憂いている様子だった。ここでも煙突で薪釜を焚いていたら近所のマンションから苦情が来たそうだ。
中古品を置いているような店はないか? と訊いてみた。
「ないですね。鋳物カマドはぼろぼろになるまで使うか、使わなければ雨ざらしで放置される例がほとんどでしょう」
残念ながら、需要がなければ作られないのが自由主義経済なのだ。しかし、チビカマはいい。使い勝手が抜群なのである。この店には僕らが使っている薪風呂釜が置いてあった。長持ちする使い方のコツなどを教えてもらった。
というわけで、まんざら空振りの川口でもなかったのだけどね。市役所の応対は丁寧だったし案内のお姉さんは美人だったし(笑)。