里山へ薪を採りに


薪を採りにける里山を探していたのだが、高松在住の読者の方からちょうどいい雑木林を紹介していただいた。

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場所は2014年から活動している東かがわの行き帰りに立ち寄れるポイントで、車道止めからちょっと歩くのだが、

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林相は典型的な西日本の里山で申し分ない。ここで薪を採りながら森を変えていくのは愉しそうである。

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常緑樹も多いが、アベマキやコナラなど落葉樹も混じっている。尾根にはネズやヤマザクラがある。夏はうっそうと暗くなるそうだ。

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竹の侵入もあり、ナラ枯れも入っている。

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ここはオーナー制度で山主さんと賃貸契約をして森を使わせてもらう山なのだが、いくつにも分かれた小区画のうち借りる人が年々少なくなり、これまでの管理手法も個々にばらばらだそうだ(確かに混乱が見て取れた)。

スギ・ヒノキ人工林には明確な目標と優れたメソッドがすでにあるが、現代の里山管理には正解というものがない。

だから、その人の主観でどうにでもいじれてしまう。生物多様性を目標にするといっても、現在はイノシシなどが増えていて(ここでも掘削跡が多数あった)すんなり成功するとは思えないのである。

私たちは囲炉裏用の薪を拾い、落ち葉を採取してアトリエの畑の堆肥に使い、竹を切ってクラフトに使ってみたい。その結果として森がきれいになっていけばよいと思う。

さっそく車止めの周りにある枯れ枝をひと束ほど拾って、夜に囲炉裏暖炉で焚いてみた。

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枯れ枝を焚いてハッと気付いたのだが、枯れ枝は実に柔らかく優しい炎を発するのである。群馬の山で囲炉裏で枯れ枝を燃した日々のことが思い出された。

ここに来て建築残材や割り薪を燃やしてばかりいたので、枯れ枝の優しさをすっかり忘れていたのだった。

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囲炉裏端で酒食を愉しんで、残り燠火をヒバコに移し変え、その夜は拾ってきた枯れ枝だけで夜を過ごせてしまった(枯れ枝でもとくに辺材が朽ちて心材が残ったものはいい燠ができる)。

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この山では焚き火は禁止されているので、現地で囲炉裏はできないが、枯れ枝を家に持ち帰るだけで、こんな楽しみ方ができる。枯れ枝や枯れ立ち木は無尽蔵にあるが、薪ストーブオーナーや炭やき師たちは見向きもしないだろう。

また、ロケットストーブは燃料穴になんでも放り込むといった体で、柔らかく優しい炎を愉しむという優雅さに欠ける。

いま里山整備にいちばん必要なのは、炎の囲炉裏なのかもしれない。

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追記:生きた木を伐採したものから枝薪をこしらえたものと、山に落ちている枯れ枝は同じではない。後者は山の中で雨に打たれ、陽と風を受けて乾燥を繰り返し、虫食いが入り、木が持つアクや油が抜けていることが多い。それゆえ、やわらかな炎を放つのであろう。アイヌも、ネイティブアメリカンも、アボリジニも、この炎を眺めていたに違いない。そして意外にも、燃え方は案外長持ちするのである。空気を含んでいるので、爆ぜることが多いのも特徴だが、線香花火のように小さく爆ぜるのがまた風情があって良い。


「里山へ薪を採りに」への2件のフィードバック

  1. はじめまして、市川と申します。
    横浜から山梨県甲府市へ移住して農業を始めて間もない三十代の新米の就農者です。
    横浜時代から火鉢で遊ぶのが楽しく勤めから帰るとすぐに炭に火をつけてぼーっとしていました。移住して借りている家には掘りごたつがあり、炭で暖がとれる構造になっているので、遊ぶだけでなく実用性も備えた趣味が家族を喜ばせてます。
    そしてこの囲炉裏暖炉の記事に自然とたどり着くわけですが、自分の感性としてとても共感できます。将来の目標として農業の腕を磨いて経営を安定させた後、是非この囲炉裏暖炉を得たいと思ってます。出版されている本には具体的にどのように作るか、またはどの施工業者にお願いできるかなど詳しく書かれてますでしょうか?設置費用などを(最低限の材料費や難しい施工はプロにお任せするといくらぐらいになるか)頭に入れて目標としたいと思ってます。
    畑では火を燃すことが良くあり、家に持ち帰りたくなりますがそれはまたお預けして、将来家の囲炉裏暖炉の火を見ながらいろいろ考察する日々を楽しみにしてます。
    楽しい記事をありがとうございます。

    1. 拙著『「囲炉裏暖炉」の家づくり』に寸法入りの図面や必要な素材、制作過程などが詳しく書いてあります。また暖炉の構造についても詳述してありますので、まずはお求めになって読んでみてください。

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