囲炉裏の上に「火棚(ひだな)」を作ってみた。火棚は雪国では濡れた雪靴などを乾かすのに欠かせないが、保存食を吊るしたりもした。また、上昇気流をいったん遮り、煙や熱気を拡散させる装置でもある。デザイン的には、吹き抜けの空間で自在カギを吊るすとき、火棚を置くことで空間が引き締まる効果を持つ。
この家ではあまり梁に加重をかけたくないので、スギ材で軽いものを作った。ギザギザの装飾彫刻は湯柄杓とお揃いのパターン。竹ザルを載せて中に食料など入れると燻すことで防腐効果も高まる。
今回は油断して餅の一部をカビらせてしまった(陽当たりのいい畳部屋に置いていた)ので、カビを削って表面を燻す。
縄はやや細めの麻縄(ホームセンターで入手したマニラ麻)。くぼみをつけた角材の端に「巻き結び」で止める。横材は切り欠きにビス止め。
ついでに弁慶も作ろう。麻縄に細木を2本差し込む。
両側から麦わらの束を押し付けて麻ひもでぐるぐる巻きにして止める。
小刀で麦わらの上下をカット。
竹串をつくって刺してみる。なかなかいい感じ。ここに川魚の焼き枯らしなどを刺し、冬の保存食に。ん~、さしずめ桐生川源流でイワナなどを釣り、湯豆腐の出汁にでも・・・などど。
「弁慶」という名の由来は、衣川で義経を庇い、矢を受けて立ち往生した姿による(イラストは拙著『山で暮らす 愉しみと基本の技術』より)。
手打ちうどんの差し入れがあったので、大きな鉄鍋を使ってみる。しかし、これが現代2010年の桐生市内の光景とは、とうてい信じられまい(笑)。
食後、火棚に段ボールを載せて対流実験をしてみる。火棚の上を遮断すると対流効果が高まり、頭の辺りがふわ~っと暖かくなるのを感じる。アイヌの茅葺き民家「チセ」にある囲炉裏では、この火棚の遮蔽部はかなり大きい。
そして重量のある4本の二股枝を利用して、火棚が構成されている。屋根を重量で押さえる構造的な効果もあるのだろう。またチセの屋根は茅葺きだが、本州の農家に比べて小さく背が低いので、囲炉裏の炎や火花による火事を防ぐ工夫でもあったのだろう。
ともあれ囲炉裏は火棚を備えることで、炉としての便利さだけでなく、火の持つあらゆる機能を備えた装置となるのである。群馬の古民家の囲炉裏に火棚があまりみられないのは、2階を養蚕室として大きく取るために、一階の天井が低いからだ。すなわちそこでは天井が火棚である。
コメント