弁慶の威力


囲炉裏の上に火棚と弁慶を作ったのは1/18。そしてチーズを試みホタテを刺したのが4/6。あれから一ヶ月。途中でシカ肉やヤキトリ(脂身のついた豚カシラ)の残りを刺してみたりしたのだが、今日はそれを外してみることにした。

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シカ肉は集落支援員でおじゃましている椹森の人にいただいた味付け肉が食べきれなかったので、竹串に焼き鳥のように刺し、囲炉裏で焼き枯らしてから、弁慶に刺しておいたのである。もう半月以上経っているだろう。途中で試食を繰り返したのは言うまでもない。

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素材それぞれ、みな一様に硬く締まってパリパリである。ホタテは干し貝柱になっている。

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シカ肉も硬くなりビーフジャーキーのようになっている。味はなかなか美味い。思ったよりもスモーク臭はない。

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チーズは1ヶ月ちょっとで体積は半分になったのではないだろうか。表面に油がにじんでいる。ナイフで削ろうとしても難儀するほど硬い。当然、味は濃縮・熟成されて、旨い。

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竹串から全部外してビニール袋に密閉して保存することにした。

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囲炉裏は毎日焚いているわけではないのだが、この弁慶の威力、乾燥力と凝縮力は凄い。とくに予想を裏切られたのは(いい意味でだが)、スモーク臭が少ないことだった。囲炉裏の煙に一ヶ月も炙(あぶ)られたら真っ黒の燻し膜がついて、味も悪く、タールがこびりつきが健康にも良くないのでは? などと懐疑的だったのだ。しかし、そうではなかった。一番上の写真を見てもらうと解るが、1月に作った火棚はまだ白木のままだ。意外に黒くならない。

ここで思い出したのは、先日訪れた木材乾燥「愛工房」の低温(45度)乾燥である。あの乾燥システムと同じ効果が、囲炉裏の上で起こっているのでは?

スモーク臭が弱く腐敗しない程度の燻し、それに低温乾燥が加わる。縄文人から始まって昭和の始めに終わってしまった囲炉裏の乾燥システムは(数千年の歴史があったわけだが・・・)実はどえらい保存・濃縮・薫乾の技術を内蔵していたのではないだろうか。「囲炉裏+弁慶」はスモーカーではなく、乾燥と非腐敗の装置なのだ。

冷蔵庫がない昔は不便だったのだろうか? おそらく縄文人たちは採れすぎた貝や魚、獣肉などをこのような方法で加工・貯蔵したにちがいない。

私たちはいま腸内細菌を殺す合成保存料と、舌を麻痺させる化学調味料と白砂糖、そして電気と電磁波と異臭を素材に突き刺す「冷蔵庫」というものにどっぷり浸かっている。エネルギーを大量消費し、燃やすと有毒物質を吐き出す建材に住まいながら・・・。

「燃し木」の文化は奥が深い。

追記/そういえば鰹節の製法にも薪による燻し乾燥の工程がある。鰹の生身を茹でてから燻しにかけるのだが、茹でたナマリ節が燻し乾燥でカチカチに固まるのがやっとイメージできた。


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