旧アトリエ最後の晩餐


薪火と土器の味わい


旧アトリエの囲炉裏。ゴトクや羽釜は桐生の囲炉裏に移動したので、今回は空き缶ゴトクに土鍋でご飯を炊いてみた。これが、羽釜(アルミ製)で炊くよりさらに美味いことを発見! 超・激ウマなのだ!!!

炊き方だが、沸騰してしまえば後は熾き炭の弱火コトコトでいい。だから、沸騰したらゴトクを囲炉裏の中央から外して、熾き火に変えて炊き続ければ、中央では吊りカギで別の料理をしたり湯を沸かし続けたりできる。

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考えてみれば土器というものは、食物をいちばん美味しく料理できる器なのかもしれない。三島の名手で知られた陶芸家の故・吉田明氏は、縄文土器の真の製法を解明されたとき「土器でつくる料理は非常に美味しい」と力説しておられた。

縄文土器の思想


囲炉裏と土器で暮らしていた縄文人は、最も自然度の高い食材を、最高の水と火と器で食べていたわけだ。これは穏やかな気持ちになれる。縄文人が争うことなく、自然を一方的に収奪することなく、数千年ものあいだ暮らしていけたのは、土器の力も大きかったのかもしれない。

彼らは環境を汚染するようなゴミを出すこともなかった。巨大なダムも造らなかった。私たちは、少しづつ縄文に回帰していく必要がある。それは超・美味しい暮らしで、人を傷つけない穏やかなものだ。

酸性雨で汚染された土壌や水を元に戻すために必要なのは、炭と灰である。その原料は木であり、それは森にある。私たちは最も尊い職業である林業をいま貶め、混乱させている。そのもつれた糸をほどき、太い糸に縒り直していかねばならない。

イタルさんのコンニャク「アラコ」


30日の晩はイタルさんが誘ってくれたので、イタルさんの家で娘のY子さんの手料理で飲ませてもらった。

イタルさんはコンニャクを干していた。生コンニャクは3年子をイモのまま出荷するが、2年子はスライスして天日で干し、出荷する。これを「アラコ」と呼ぶ。

持倉のSIさんの話では、最盛期(昭和20年頃)には10貫(37kg)のアラコが当時のお金で3万円だったそうである。いかにコンニャクが高価なものであったかが解る。これは工業用にもコンニャクが活躍していたからだ。

コンニャクを煮溶かして塗り付けると防水性・気密性を発揮することから防水加工用の素材として盛んに利用された。第二次世界大戦当時の日本では東南アジア方面のゴム資源が得られにくくなっており、合成樹脂の大量生産は技術的にも経済的にも確立されていなかった。耐久性こそゴムに劣るものではあったが、国内調達が可能なことが大きな強みであった。元々は和傘などで「コンニャク糊」として利用されていたものの応用だが、果ては風船爆弾のような兵器にまで利用された。(wiki)

 

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手間がかかるためこの天日干しアラコを出荷する農家は激減している。しかしやはり製品にすると風味が良いのだろうか、買い付ける業者がいるという。その意味でもイタルさんは貴重な人なのである。

コンニャクと木材のセーフガード


コンニャクは現在、中国からの輸入ものもあるが、政策によって関税が高くかけられたりセーフガードもかけられたりで、手厚く保護されており、群馬の下仁田や松井田方面ではかなり広大な農地で作られている。群馬は何人もの首相を輩出したが、なにしろ「自民党こんにゃく対策議員連盟」(笑)なるものまで作られているのだ。

さて輸入木材の関税はどうなっているのだろうか?

1964年に、日本の林産物貿易が自由化されて以来、ケネディ・ラウンド合意(1968~1972実施)、東京ラウンド(1980~1987実施)、モス合意(1987~1988実施)、UR合意(1995~1999実施)が行われ、少しづつ関税率は引き下げられてきた。

特に、1993年12月15日に合意されたUR合意では、1994年の関税率を1995年1月から1999年1月までの間に平均30%引き下げることが決定され、現在の関税水準は、丸太は0.0%、製材は0.0%~6.0%、合板は、6.0%~10.0%となっている。一方、紙製品関係については、木材チップやパルプは0.0%であり、紙製品は2004年までに0.0%とすることがUR合意の際に決定されている。(FoE Japanより)

なんと丸太については関税ゼロ。製材品でも最大で6%。つまり為替レートそのものに翻弄されるまま、安い外材と競争させられているわけ。

ちなみにコンニャクの実質関税率は2308%(!)。輸入木材の「関税ゼロ」という国内木材への対処とはどえらい違いではないか。

政治のさじ加減一つで、産業なんてどうにでもなってしまうんだね。

ちなみに、国内のコンニャク農家ではクロール・ピクリンという劇物農薬による土壌消毒が行なわれるのが常である。そこは都心の水源地帯でもあるのだけどね。


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